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欧州雑感09:ドイツを目指す地中海難民


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ドイツの移民受入れ推進政策の背景には、第二次大戦の荒廃から一刻も早く立ち直りたいという動機と、ナチス・ドイツ体制下の他民族への苛烈な対応への反省があるのだろうと思う。しかし、このまま従来の移民政策を続けて良いかどうか、きわめて危うい状況になって来た。

先般、英国を目指す地中海難民を英BBCが盛んに報じていると紹介したが、こんどは仏F2、独ZDFが、ドイツを目指す大勢の移民・難民を頻繁に紹介するようになった。彼らが押し寄せる姿は、あたかも民族の大移動でもあるかのように映る。

シリアの内戦から逃れるために、あるいはISの攻撃から逃れるために、ひょっとしたら貧困から逃れるために、バルカン半島を通って欧州へ流入しようとする大勢の移民・難民。彼らは、セルビアからハンガリーを経由してオーストリア、そしてドイツを目指しているという。(ドイツからの要請があるのかないのか分からないが)、移民・難民の流入を食い止めるために、ハンガリーは、セルビアとの国境に有刺鉄線を張り巡らせた。しかし、有刺鉄線などいっときの時間稼ぎにしかならず、難民たちは、いともたやすく乗り越える。

それでもハンガリーは、パスポートを持たない彼らをノーチェックで黙って通過させるわけに行かない。その結果、ブダペスト駅周辺は、膨大な数の移民、難民で溢れ返っている。その映像はNHKでも放映するまでになった。

今年になってドイツに入った移民・難民は、すでに80万人に及ぶと云う。そのうち地中海難民は30万人を占めると云う。

それにしてもなぜ移民・難民がドイツを目指すのか。

それはおそらく欧州でいちばん光り輝いている国だからだろう。第二次大戦後に積極的に移民を受入れ労働力を確保して来た歴史があるからだろうし、(建前では)民族差別が固く禁じられているからだろう。そうしたことが相まって移民・難民を自ら引き寄せてしまっているという側面もありそうだ。

しかし、現在のような数多の新規の移民・難民の流入が続けば、あっという間に許容範囲を越えることだろう。つい先日、メルケル首相も、移民・難民問題に、強い危機感を表明した。この問題は、ギリシャ問題よりも深刻と受け止めているようだ。

以前、欧州に「国境が復活する気配」と書いたけど、だんだんと現実味を帯びつつある。

欧州雑感08:国境が復活する気配
欧州雑感07:弱い国が強い通貨を持つ悲劇
欧州雑感06:スペインが熱い
欧州雑感05:イタドリという外来種
欧州雑感04:二つのグループ
欧州雑感03:内部の宗派対立
欧州雑感02:統合か愛国か
欧州雑感01:地中海国境という言葉


画像出典:googlemaps

by naomemo | 2015-09-02 21:45 | いまを読むノート