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欧州雑感05:イタドリという外来種


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今回は過去から現在への移植です。

いまからちょうど5年前、NHK BS「おはよう世界」を見ていたら、英国で被害を拡大させているイタドリという外来種植物が紹介された。

イタドリの繁殖力はきわめて旺盛で、「在来種の植生を脅かす外来種となり、コンクリートやアスファルトを突き破る」(ウィキペディア)などの被害が多発していたと云います。往時なら、薬剤を撒布して生育を止めるなどの対策が取られたのでしょうが、環境への配慮が重視される現在ではそれもできず、別の方法が模索された。

そして白羽の矢が立ったのが、もともとイタドリと同じ環境にいたイタドリの天敵。イタドリ・マダラ・キジラミ。あれ、なにそれ、日本語じゃないの?と思うでしょ。そう、英国から見た外来種イタドリとは、もともと日本から持ち込まれたものらしい。それが大繁殖して生態系を狂わせていたので、同じ環境出身のイタドリの天敵で繁殖を止めようと計画されたわけ。ふむふむ。(※)

その後、英国におけるイタドリ対策はそこそこうまく行っているらしいのですが、いやいやまだ分かりませんよ。生態系の異変は、アハ体験のごとく緩慢に進んでいって、気がついた時には取り返しがつかなくなっていたりするものです。それかあらぬか、スコットランドは外来種を持ち込む対策には反対の立場を取っていると云います。

生態系は一度狂うと、なかなか元に戻れない。

そこで思うのが、植物や昆虫に生態系というものがあるのなら、人間だって同じ土俵の上にいるはずだよねということ。社会のあり方、文化のあり方、宗教のあり方、経済のあり方、金融のあり方まで、すべてに渡って同じことが云えると考えてみたらどうだろう、と。

たとえば移民問題。欧州域内では、経済効率の観点から移民受入れ促進政策を続けてきたけれど、ちょうど英国でイタドリが問題になり始めた頃から、移民排斥の機運が高まっていたわけね。こうした同時性には驚くほかない。

そして、今がある。だから、イタドリのその後はとても気になっている。

(※)
当時の番組キャスター高橋弘行氏は、このイタドリのニュースにこんなコメントを追加した。以前、南米で同環境の生物を利用した生態系維持対策を打ったところ、こんどは対策に使った生物が大繁殖して別の被害が拡大した例もあると。この味付けで、ニュースにぐっと深みと広がりが増したものだ。彼のコメントがじつに面白くて毎朝のNHKBS海外ニュースを楽しんでいたのですが、なぜかその後に降板となって久しい。ぜひ戻ってきて貰いたいものだ。



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画像出典:イタドリ(写真上)イタドリ・マダラ・キジラミ(写真下)

by naomemo | 2015-03-06 08:51 | いまを読むノート