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音楽の身体に触れた夜

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先日、イタリア文化会館で催された「ヨーロピアン・バロック音楽フェスティバル第1回」に足を運んだ。フェスティバルとは銘打ってあるが、それは大袈裟で、ありていに言えば古楽器によるバロック・コンサートだ。ただ、EUNICジャパンという組織が中心となって主催していて、つまりはEU文化機関による欧州音楽文化の広報活動という位置づけにあるのだった。イタリア文化会館を皮切りに、各国が持ち回りで開催するらしい。第2回の日程は未定、どこの国が運営にあたるかアナウンスしてたけど、忘れた。

ま、そんなことは私にはどうでもよくて、心地よい音楽の時間が持てたことで大満足なのだった。

今後、出演者が変わるのか変わらないのか不明だけど、今回は古楽演奏グループOrchestra Libera Classicaの音楽監督である鈴木秀美さん(チェロ)、メンバーの荒木優子さん(ヴァイオリン)、上尾直毅さん(チェンバロ)、そして声楽アンサンブルLa Fonteverdeの中心メンバー鈴木美登里さん(ソプラノ)の四名による親密な室内楽演奏会だった。

いつもとおり、まるで熊さんのようにバロック・チェロを抱きかかえるようにして弾く鈴木秀美さん、じつに愉しげに身体でリズムを取りながらチェンバロを弾く上尾直毅さん、どこまでも透明で艶やかな素晴らしいソプラノで歌う鈴木美登里さん、そして、まるで自分の深い呼吸に合わせるかのようにヴァイオリンを弾く荒木優子さん。奏者の身体と楽器が渾然一体となった、じつに愉しい一夜だった。

なかでも、荒木優子さんの、まるで吐息のようなヴァイオリンには心を奪われた。彼女のバッハをぜひまた聴きたいものだ。一目惚れならぬ、一夜惚れ。

当日のプログラムはーーー
●「主をたたえよ」
 クラウディオ・モンテヴェルディ(イタリア)
●チェロと通奏低音のためのソナタ ニ長調
 ゲオルク・フィリップ・テレマン(ドイツ)
●ソナタ ルビオ番号54番(デ・クラリネス)ハ長調
 アントニオ・ソレル(スペイン)
●「マリツァパロス」による変奏曲
 作者不詳(スペイン)
●ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト短調 BWV1021
 ヨハン・セバスチャン・バッハ(ドイツ)
●「簒奪者にして暴君」
 ジョヴァンニ・フェリーチェ・サンチェス(イタリア、オーストリア)
●チェロとバスのためのソナタ ハ長調
 ルイジ・ボッケリーニ(イタリア、スペイン)

〈20分の休憩〉

●第6旋法による戦い
 アントニオ・コレア・ブラガ(ポルトガル)
●ソナタ「かっこう」
 ヨハン・ハインリッヒ・シュメルツァー(オーストリア)
●聞いて下さい/ああ、そうだ、いや、違う!
 ホワン・イダルゴ・デ・ポランコ(スペイン)
●ソナタ第71番 イ短調
 ジョゼ・アントニオ・カルロス・デ・セイシャス(ポルトガル)
●ロザリオのソナタ第10番「磔刑」
 ハインリッヒ・ビーバー(オーストリア)
●恋のリラにのせて
タルクイニオ・メールラ(イタリア)

この順番を見ただけで、なんとも慌ただしい団体旅行のようで。演奏前に一曲一曲、曲目の紹介を日本語と英語でされる鈴木秀美さんも重々承知で、主催者側の要請とはもちろん口にはされなかった。でも、そんな慌ただしい演奏旅行が愉しかったのは、ひとえに鈴木秀美さんの人柄とメンバーの演奏のクオリティの高さによるものだったに違いない。

by naomemo | 2012-04-05 18:44