網野善彦「日本の歴史をよみなおす」

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昨晩、シネセゾン渋谷でアルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」を観て来た。センスのいい大人の映画だった。たっぷりと堪能しました。感想はまた別の機会に。今日は読書メモです。

網野善彦「日本の歴史をよみなおす」、読了(どんだけ時間かかってるんだろ)。これ、日本の中世社会史ともいうべき本なんだけど、貨幣発生史としても読むことができる優れものですね。類いまれなる名著と言っていいんじゃないだろうか。

日本の中世では、どうやら、絹、布、塩、米など、複数のものが物品であると同時に貨幣でもあったようだ。金がジュエリーであると同時にマネーだっとのと同じ。希少なもので、誰もが必要とするもので、長持ちするもの、これが貨幣の始まりだったんだね。

当時の荘園公領制度では、天皇家、摂関家、寺社が荘園を各地に分散所有し、国主の傘下に公領があったらしい。そして年貢=税金を取っていた、と。天皇家、摂関家、寺社の傘下には、神人とか供御人とか芸能の民とか遊女とか職人とかが全国にネットワークを形成。そして、その神人とか供御人とか呼ばれる人たちが、寺社の権威を背景にして、流通を支配し、金融業も営んでいたようだ。しかし、日本の権力構造が大きく変わると、天皇家、摂関家、寺社の傘下でいた人たちが弾かれ、賤視されるようになった、と。その展開はじつにダイナミック。

流通と金融を支配していたものたちが、権力構造の変化で賤視されるようになった現象。これって、欧州大陸においてユダヤが置かれた状況とウリ二つ。内田樹「私家版ユダヤ文化論」ではよく分からなかったけど、網野善彦「日本の歴史をよみなおす」と司馬遼太郎「オランダ紀行」を合わせ読みして、はじめてユダヤ問題の本質が見えたような気がしたよ。

この本は、市場が持つ意味だとか、百姓とは農民のことじゃないとか、さまざなま職能民のこととか、東と西はかなり違いのある社会だとか、内容はほんと盛りだくさん。まさに価値ある一冊です。

ついでだけど、「オランダ紀行」によれば、ほとんどのオランダ人には大なり小なりユダヤ人の血が入っているらしい。ベルギーは、三顧の礼を持ってユダヤ人をアントワープに招き、ユダヤ人街を作って守っているんだとか。これまでどうしても理解し難かったユダヤ人差別問題の根っこに触れた感じがする。ようやく解放された気分。

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by naomemo | 2010-10-21 09:15