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コリン・ジョイス「アメリカ社会入門」を読んでみた


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日本に長く在住し「ニッポン社会入門」を著したジャーナリストが、07年に渡米した。そして上梓したのが、「アメリカ社会入門」である。

先日、本屋で、目次に目を通した。前書き「アメリカ、この魅力的で奇妙な国」の冒頭を読んでみた。こう書かれている。「成人してから、ぼくはふたつの国に住んだ。いずれも母国イギリスではない。日本とアメリカだ。どちらかの国に、より強い違和感を覚えるかと聞かれたら、ぼくは間違いなくアメリカと答えるだろう。」ふーん、そーなの、だよね。

印象に残ったところがふたつあるので、メモしておく。

ひとつは、アメリカン・ドリームを幻想と言い切っていること。アメリカの社会的流動性は、じつはカナダやデンマークよりも低い、と。もちろん立身出世を成し遂げた人物はいるが、ごく稀なケースであって、それはアメリカだけに特有なものではないという。ようするに、「アメリカン・ドリーム神話」は、アメリカ社会に厳然と横たわる「巨大な貧富の格差」を覆い隠す、ある種の「装置」として機能しているのではないかと、著者は感じているのだ。

もうひとつは、アメリカ人の強い宗教性について。もともとメイフラワー号に乗ってアメリカにやってきた一団は、ピルグリム・ファーザーズであり、彼らが本質的にはキリスト教の狂信的なまでの信者だったことは忘れてはならない、と。世論調査によれば、アメリカ人の80%以上が神の存在を信じており、無神論者は10%にも満たない。さらに、62%の人々が悪魔や地獄の存在を信じている一方で、ダーウィンの進化論を認めている人は42%とか。さらに、半分以上のアメリカ人が自分には守護天使がいて、自分を守ろうと手助けしていると信じているそうだ。

そういえば、最近、アメリカ全土で巨大なアリーナのような教会ができていると聞く。今年観たアメリカの映画「チェンジリング」にも「グラントリノ」にも、牧師がしっかり登場していたし。保守化しているのか、なにかに回帰しようとしているのか。こうした強い宗教性が、アメリカの対外政策にも影を落としているような気がしないでもないな。

by naomemo | 2009-08-27 08:15