金利を産まない金の価値


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はじめての金読本、移植第6弾です。2011年11月11日に公開した原稿に手を入れたものです。

お金は、人から人へ、企業から企業へ、国から国へ動きます。もちろん企業から人、人から国へも動きます。社会のなかに張り巡らされた血管のなかをお金がぐるぐる回ってくれることで、社会生活や経済活動は成り立っています。

ぐるぐる動いた結果として利益が生み出されます。昨今とても微々たるものになっているとは云え、銀行は利益の一部を預金者に「利子」として渡します。一般企業の場合はたとえば「配当」という名目で分配します。

もう一歩、駒を進めてみましょうか。銀行も一般企業も資金の貸し手(=出資者)がいなければ存在しません。そもそも設立の原点に「貸し借り」というものがあるわけです。

貸し借りはもちろんタダではありません。そこで関与してくるのが「信用」です。信用が高ければ安い利子でお金を借りられます。しかし信用が低ければ高い利子を付けなければお金は借りられません。

どちらが利益を出しやすいかは云うまでもありませんが、それはさておき、お金は利子や配当と切っても切れない関係にあるわけです。利子や配当がついてこそお金としての存在価値があると云っても差し支えありません。

ところがここに利子や配当と無縁のお金がひとつあります。もともとお金であり通貨価値の拠り所と見なされてきた金です。金は社会のなかをぐるぐる動いて利子や配当を生み出すことがありません。

社会や経済のなかで流通するお金とは異質なもので、金は本来、投資とか運用から遠い資産です。お金としては歪んだ存在と云うことが出来るかも知れませんが、だからこそ金は信用とも信用リスクとも無縁の資産となります。(※)

そんなお金としては歪んだ金が、21世紀に入って輝きが増しているのは、つまり、社会や経済が混濁して先々が見通せなくなっているからに他なりません。

最後にひとつ。金はたしかに信用とも信用リスクとも無縁の資産です。ただ、金には金利がつかないゆえに、金利の上昇や株価の上昇局面は、金価格にとって大敵となります。金と付き合う場合は、ここのところをしっかりと認識しておくことが大切です。

次回から、金価格のABCをとびとびで4回に渡って掲載します。


イラスト:三井孝弘さん


(※)
もしも配当を産む金があるとしたら、そこには何がしかのリスクがあると考えてしかるべきでしょう。



# by naomemo | 2015-02-26 08:53 | →はじめての金読本

爬虫類目のクルマ


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街を歩いていて、ときおりハッと感じることがある。爬虫類が街を駆け抜けている!まさか、そんなことある訳ないし、幻影を見ている訳でもない。ジュラシックパークの話がしたい訳でもありません。

いつの頃からか定かではないんだけど、なぜこうも新しく出てくるクルマの顔が怖いのか。気になるのが人間で云えば目に相当するフロントライトのデザイン。ほとんど爬虫類の目である。凶暴な爬虫類がいまにも食ってかからんばかりに睨みつけているように見えるのだ。

フロント部分の空力特性をとことん追求したらこうなった、と云うことなのだろうか。いやいや、そういうものでもあるまい。いまの険しい時代の空気が、あたかもクルマのデザインに乗り移ったかのようである。

そう考えて見渡してみると、街ゆく人の顔も、やっぱり同じように険しくなってるような気がしないでもない。満員電車のなかも、ときおり険しい雰囲気になることがある。けっして安穏とは云い難い。穏やかな気分でいたいものだ。

今回は考えていることがまとまらず、落とし話でお茶濁し。じゃんじゃん。


爬虫類の画像出典:
http://farm9.staticflickr.com/8016/7102606065_e64108e8a3_b.jpg

# by naomemo | 2015-02-25 06:56 | いまを読むノート


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はじめての金読本、移植第5弾です。2010年2月10日に公開した原稿を整理、加筆したものです。

金の真価を考える上で、よい材料が数年前に身近にありました。

戦後の日本を象徴する会社の一つである日本航空が、長期にわたる経営不振から脱け出せず、政府の支援をうけて出直すことになりました。理由や事情はさておき、その結果、日本航空の株価は一旦ゼロになることが決まりました。今から30年前、誰がこの姿を予想したでしょうか。

株価というのは会社の経営状況を反映します。好調が続けば、あるいは成長すると予想されれば、株を買う人が多くなって、おおむね株価は上がります。株主は配当を手にすることもできます。

もちろん実際はそれほど単純なものでもなく、現在の米国や日本のように、中央銀行による果敢な量的緩和によって株価が押し上げられている面もありますから、一概には云えません。

その反対に不調が続けば株価は下がります。経営が立ち行かくなれば、株価はゼロになります。先の日本航空はその最悪のケースに当たります。(※)

でも、これは、株に限ったことではありません。極端なことを云えば国債にも当てはまることです。発行元が、株は会社、国債は国という違いはあっても、つまるところ信用がベースという点では同じです。信用が高ければ価値ある優良な資産となりますが、信用を無くせば無価値になりうるというのが、株や国債といったペーパー資産の宿命です。

それと好対照なのが金地金や金貨です。金は世界各地で産出される貴重な天然資源です。会社とか、国とか、つまり誰かの信用に依って価値が成り立っているものではなく、独自の価値をもつ実物の資産です。

自立した資産ですから、金は「信用」とも「信用リスク」とも無縁です。何があっても無価値になることがありません。

そして同時に「自立した資産」であるがゆえに、金は金利という果実を生むこともありません。株のように配当が付くということもありません。ただ、そこに存在するだけのものです。

そうした意味から、金は、攻めの資産ではなく、守りの資産と云うことができます。あくまで「万一の保険」であり「ヘッジ資産」です。世界中が戦争に向かいつつあるかに見える今だからこそ、注目しておきたい金の側面と云えるでしょう。


イラスト:三井孝弘さん


(※)
2010年にいったん倒産した日本航空ですが、そののち稲盛和男という名経営者を得て再建を成し遂げたことは、社会にとっても従業員にとっても、僥倖と云うほかありません。



# by naomemo | 2015-02-20 09:04 | →はじめての金読本


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先日、WOWOWでケイト・ブランシェット主演の「エリザベス」と「エリザベス:ゴールデン・エイジ」を連続で観なおす機会があった。ケイト・ブランシェットのエリザベスもなかなかのものだったけれど、ジェフリー・ラッシュ演じるフランシス・ウォルシンガムが目を引いた。

この作品がどこまで史実に基づいているのか不明なのだけれど、エリザベス政権を確実なものにするべくフランシス・ウォルシンガムによって国内外に張り巡らされた諜報・監視網が、世界に冠たる英国諜報組織の礎になったのかも知れないな、などと妄想を逞しくしてみたりもした。

映画の中では、まるで「ゴッドファーザー」における敵対勢力の謀殺を彷彿とさせるようなシーンがあった。ちょっとやり過ぎじゃないの?と思いつつも、あらためて英国の16世紀は血塗られた時代だったんだなと感じたし、宗教がからむ軋轢あるいは宗教の衣をかぶった対立が表面化すると、じつに厄介になるものだな、とも感じた。その意味で、面白い作品ではあった。英国はそれから半世紀後に清教徒革命の嵐が吹き荒れる訳だけれど、繋がっているわけね。

さて、ロシアのことである。

プーチン大統領は、旧ソヴィエト連邦時代に宗教が厳しく弾圧されたのとは対照的で、ロシア正教会を手厚く保護していることで知られる。根っ子に個人的な宗教心もあるのかも知れないけれど、やはり政権の求心力強化のためにロシア正教会を利用して愛国心を温めてきた、と見るのが正解だろう。結果、愛国心の体温は、すでに適温を越えて沸騰しかけていると見られている。その最右翼がウクライナの親ロシア派であろう。ウクライナは東部地域を失うと経済が破綻するとの見方がある一方、その東部地域はロシア語地域であり首都モスクワの喉元に位置することから、双方の歩み寄りは容易ではないわけだ。

宗教の文脈で欧州を見渡すとロシアと共通の宗派に属する国がいくつかある。なかでも目を引くのが、いままさにEUにとって頭痛の種となっているギリシャである。それぞれロシア正教会、ギリシャ正教会と呼ばれてはいるが、これは東方正教会のロシア版、ギリシャ版であって、別物ではない。プーチン大統領がロシア正教会を保護してきた深慮遠謀は、こんなところにも感じられる。

欧州の「東の果て」と「南の果て」には、欧州と宗派が異なる国がある。

では、東方正教会を除けば、欧州内部は一体かといえば、そうでもなく別の宗派対立の芽もある。これはまだ地下深くに眠っているのだけれど、EUが経済財政問題だけでギリシャの扱いを誤ると、目を覚ますような気がする。

(※)
エリザベスの画像をクリックするとAmazonの関連ページにジャンプします。このブログには、ところどころに隠しリンクを埋め込んであります、じつは。


欧州雑感08:国境が復活する気配
欧州雑感07:弱い国が強い通貨を持つ悲劇
欧州雑感06:スペインが熱い
欧州雑感05:イタドリという外来種
欧州雑感04:二つのグループ
欧州雑感03:内部の宗派対立
欧州雑感02:統合か愛国か
欧州雑感01:地中海国境という言葉

# by naomemo | 2015-02-19 08:35 | いまを読むノート

金は国籍を持たない通貨


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はじめての金読本、移植第4弾です。2010年2月1日に公開した原稿を整理、加筆したものです。

海外に出かけると日本とのさまざまな「違い」に気づかされます。町並みが違います。食べ物が違います。人の肌の色や顔つきが違います。もちろん歴史も文化も習慣も違います。それらの違いが言葉の違いとなっても現れています。

とうぜん、その地で使われているお金は日本円ではありません。その地が米国なら「ドル」が使われています。EU圏なら「ユーロ」が使われ、お隣の韓国なら「ウォン」が使われ、中国なら「人民元」が使われています。なにを今さらと思われるかも知れませんが、もう少し我慢してお付き合いください。

お金が違うということは、たんに名称や単位が違うというだけのことではないのですね。お金は、その国の歴史、経済、社会、文化というぶあつい土台に根ざしているもので、言葉とおなじく国籍や地域籍を持っているわけです。

ここで少し寄り道をします。

EU圏の単一通貨「ユーロ」は誕生してまだ16年です。いま荒波に揉まれて試練の時を迎えていますが、ほんとうの意味で域内に根付いていくには、それ相当の時間が必要ということなのでしょう。

ユーロ硬貨のデザインそのものが暗示的でもあります。表面のデザインは共通でヨーロッパの俯瞰図が描かれていますが、裏面は各国独自のデザインになっているからです。まさに「通貨はひとつ、財政も国の事情もバラバラ」というユーロのアキレス腱が、硬貨のデザインに現れていると云えそうです。

さて、ここに、世界にひとつだけ国籍を持たないお金(通貨)が存在します。どこの国あるいは地域が発行しているわけでもないのに、通貨としての価値が認められているもの。それが金です。

たしかに金貨にも金地金にも、製造元の商標などが刻印表示はされてはいますが、有り体に言えば、それは血統書みたいなもの。評価の尺度は、金の場合、品位(金の純度)であり重量であって、それはまさに世界共通のものです。

繰り返しますが金には国籍も地域籍もありません。どこのパスポートも必要としない無国籍通貨です。だからこそ民族のカベを越え、宗教のカベを越え、国家や政治や経済のカベも越えて、世界の誰からも受け入れられているのです。

世界中にリスクが満ち溢れている現在、この点は、もっとも注目すべき金の真価と云って良いかも知れません。


イラスト:三井孝弘さん

# by naomemo | 2015-02-18 07:40 | →はじめての金読本