c0112103_1514473.jpg


だいたい毎朝4時前に起床して1時間ほどウォーク&ランあるいはウォーク&トレーニング。ここから1日は始まる。しっかり汗を流しシャワーを浴びないと、アタマがはっきりしない体質というか年齢なのだ。それからだいたい1時間ほどBS海外ニュースを観ているのだが、ここ数日前から繰り返し報道されていることが気になっている。

ひとつはフランスにおける酪農家たちのデモンストレーション。隣国ドイツとの境、スペインとの境で、フランス国内に入って来るトラックを停止させて、酪農家たちが荷物検査を行っているのだ。一種の検問である。ニュースだけでは把握し切れないところがあるけれど、どうやらこんなことらしい。ドイツあるいはスペインから入ってくる安価な製品によって、同国の酪農業が半端ない痛手を被っている。さらに米国主導(欧州追随)によるプーチン・ロシアへの経済制裁の長期化によって、フランスの酪農家は上得意先を失い瀕死の状態にある。この二つが相まって、鬱憤が溜まりに溜まり、怒りのエネルギーが沸騰しているかのようだ。

もうひとつは英国の移民受け入れ拒否。フランスのカレと英国のドーバーを海底で結ぶトンネルを英仏海峡トンネルというが、(BBCはユーロトンネルと呼んでいるが)、カレー側のトンネル入口にトラックが長蛇の列をなしている。どういうことかといえば、英国に憧れてカレからドーバーを目指す大勢の移民を、英国サイドが水際で塞き止めているわけだ。ただでさえ同国は移民対策に窮しており、さらなる移民の流入はご免被りたいということだろう。テロの脅威、差別や格差などがコントロール不能になりかねず、広い意味での英国社会の安定がこれ以上損なわれることを防ごうとしているわけだ。

この二つに共通して登場しているのが、ボーダーすなわち国境である。

思い起こせば戦後の欧州は、第一次大戦、第二次大戦のような大きな戦争を二度と起こさないという強い思いを持って再出発。戦争資源(石炭や鉄鋼など)の共同管理を行ない、域内の関税を撤廃し、人の移動を自由にし、ついには通貨もひとつにして来た(英国はポンドを維持しているが)。欧州全土をひとつの共同体にまとめ上げればケンカも起こらないだろう、と考えたわけだ。そして、現在のEUがある。

ボーダー=国境は無くなり、モノもヒトも自由に行き来できるようになったわけだが、どうもここに来て雲行きが怪しくなり始めた。これまで東欧および中東からの移民が、高齢化対策、労働力確保、生産性向上といった課題解決策だった時代から、国内の格差・差別を助長し、挙げ句の果てにテロの温床にもなる時代へ移行しつつあるかに見える。

結果的には否決されたがスコットランドには英国からの独立を望む国民が多くいる。英国のキャメロン首相は同国のEU離脱を国民投票にかけるらしい。バルセロナを抱えるカタルーニャはスペインからの独立を望んでいる。そのスペインではドイツ主導のEUが押し付ける緊縮策に反対する勢力が台頭している。

ボーダーレスを求めるグローバリスムとボーダーを復活させたい愛国主義。この対立の構図が、欧州でますます際立ち始めているようだ。


欧州雑感08:国境が復活する気配
欧州雑感07:弱い国が強い通貨を持つ悲劇
欧州雑感06:スペインが熱い
欧州雑感05:イタドリという外来種
欧州雑感04:二つのグループ
欧州雑感03:内部の宗派対立
欧州雑感02:統合か愛国か
欧州雑感01:地中海国境という言葉

by naomemo | 2015-07-29 15:06 | いまを読むノート


c0112103_11172762.jpg

純金積立とプラチナ積立をおやりになっている読者から、以前、こんな質問をいただいた。「金とプラチナは同じスタンスで買っていて良いものかどうか」と。なかなかクールな質問です。

両者はおなじ貴金属でありながら、さまざまな違いがあります。そうした違いを知っておくことで、たしかにスタンスは変わるでしょう。今回は、両者の違いを5つの視点で整理してみます。

第一の視点:通貨としての顔
金は装飾品として7000年の歴史を有しています。通貨としても2500年の歴史があります。金はそれだけ長い過酷な時の風雪に堪え、いまなお装飾品として資産として価値を認められています。それに対してプラチナはどうなのか。貴金属として一般に認知されてから、残念ながら250年の歴史しか有していません。発見や認知が遅れた要因は、産出地域がごく限られていること、融点が高く(金が 摂氏1064.4度、プラチナが摂氏1770度)、加工が容易ではなかったことが関係しているのではないかと思われます。いずれにしてもこの浅い歴史ゆえにプラチナは「通貨になり損ねた貴金属」、と云うことができるかも知れません。通貨としての顔を持つ金、通貨としての顔を持たないプラチナ、ここがまず第一の違いでしょう。

第二の視点:市場規模の違い
金もプラチナも希少な貴金属として知られています。が、希少性という観点で見ると、プラチナは貴金属の王様とも云うべき存在です。市場規模で言うとプラチナは金の1/20、希少価値では断然プラチナに軍配が上がります。したがって、平時であれば、金よりプラチナの価格の方が高いのが普通です。ただ、当然のことながら、金に比べてプラチナの流動性は低いわけで、プラチナの市場価格は時に大きく変動しがちです。

第三の視点:産出地域の違い
金は希少な貴金属と云いつつも、北米、中南米、アジア、アフリカ、オセアニア、ISなど、世界各地域であまねく産出されています。ところが一方のプラチナは、その産出量の7割を南アフリカ共和国に依存しています。したがってプラチナの供給は、同国の政治および経済状況の影響を強くに受ける傾向があります。とくに鉱山労働者の賃金上昇圧力と電力インフラの脆弱さが、同国の鉱山経営にとって二大リスク要因になっています。

第四の視点:需要構造の違い
金需要は、宝飾品と工業品で6割、残りは公的部門の購入および個人投資用という構成になっています。商品と通貨の二つの顔を持つゆえに、金需要は景気動向に左右される反面、金融情勢にも大きく左右される傾向があります。一方で、プラチナ需要はディーゼルエンジン自動車の排ガス触媒と宝飾品で8割近くを占めています。残りもほとんどが工業用の需要です。プラチナは産業用の貴金属であるため、需要動向は景気に大きく左右されます。

第五の視点:主要な需要地域
金の最大需要地は、いまさら云うまでもありませんが、インドと中国です。両国の需要を合わせると、世界の現物需要の4割程度となります。一方、プラチナの需要地は、欧州と中国です。欧州の主要な需要はディーゼルエンジン自動車の排ガス触媒、中国の主要な需要は宝飾品、この二つだけで世界需要の4割に達します。とくにプラチナ需要の動向を見る上で、この点は重要です。

このように金とプラチナはおなじ貴金属でありながら、投資媒体としては、かなり違いがあることが分かります。いろいろな考え方があるだろうとは思いますが、まとめれば中長期の資産として保有するのであれば金、中短期の投資を楽しむのであればプラチナ、と位置づけて付き合って行くのが良いのではないでしょうか。


イラスト:三井孝弘さん



by naomemo | 2015-07-24 11:19 | →はじめての金読本


c0112103_1057574.jpg


中国という国は、古来より度重なる王朝あるいは政権の交代で、紙幣が紙くず同様になる悪夢を幾度も経験してきたがゆえに、中国人民は政府発行の紙幣にあまり信を置いていないとされる。

それがどの程度の不信感となっているのか定かではないけれど、彼らは(その昔は通貨であった)金や銀に対して、ことさら強い欲求を持っているようだ。その証拠に、貴金属の代表ともいえる金の需要を見ると、金自由化以降、中国の世界シェアは、(2014年は減少したとはいえ)20%強まで拡大している。

では、プラチナはどうなのか。これまで中国の人民は金や銀は欲しがってもプラチナには見向きもしなかったとされる。その理由はおそらく二つ。ひとつ目の理由は、見た目は銀と大差ないのに、銀に比べてプラチナの価格は異常に高いこと。ふたつ目の理由は、金や銀と違い、プラチナには通貨としての歴史がないこと、であろう。

しかし、中国におけるプラチナ宝飾需要は、じつは飛び抜けて大きい。なにがキッカケなのかは分からないが、いまでは、「プラチナ雑感01:欧州とプラチナ」で紹介した欧州におけるディーゼルエンジン車の排ガス触媒需要を凌駕する規模にまで拡大している。

というわけで、これからプラチナ需要の動向を見る際は、欧州の景気同様、中国の景気も重要な指標となる。ただし、中国においてもプラチナは投資媒体としては認知されておらず、いまのところ宝飾品としての位置づけにある。とは云っても、アジア中東地域における貴金属の宝飾品は、欧米とは異なり半ば資産としての位置づけにあることは付け加えておきたい。

こうした観点から、中国の景気後退局面、信用リスク増大局面では、プラチナの需要が凹む可能性は高いと見ておいて間違いなさそうだ。折しも、中国は過剰な債務を抱え、上海株式市場が大きな調整局面にあるゆえ、プラチナには現在、下押しのプレッシャーが掛かっている。ニューヨーク先物市場で売り物が膨らんでいる(過去20年でほぼ最高水準まで拡大している)背景の一つとも云えるだろう。しかし、いずれそこは買い戻されることになる。それがいつのことになるかは分からないけれど。

プラチナ雑感01:欧州とプラチナ


画像出典:All About「中国の両替」

by naomemo | 2015-07-16 11:07 | →はじめての金読本


c0112103_11254774.jpg


個人的にプラチナにコツコツ買いを入れているので、ここで欧州とプラチナについてメモして置こうと思う。たまにはこんな話題もいいでしょ。

その前に、ざっくりと全体を押さえておきたい。いまは世界中に緩和マネーが溢れている。しかしその膨大なマネーの運用先となると、そうそうあるものじゃない。いまの欧州には行きにくい。経済全体として見れば最悪期は脱して、そろそろ浮上という段階だが、しかしギリシャ問題が解決せず、ことによればスペイン、イタリアへの飛び火の可能性も否定できない。

新興大国の中国は景気後退のサインが点滅中。しかも、あろうことか上海株式市場が官製バブルの崩壊で、いまは危なっかしくて近寄れない。ロシアにも政治的な理由で近づきにくい。堂々と近づけるのは中国くらいなものである。そこはさすがと感じる。

一方、リーマンショック後に市中のドル流通量を4倍まで膨張させて景気が回復基調にある米国は、緩和の出口に向かおうとしている=引締めに動こうとしていることから、ドルが新興国から米国本国へ里帰り。FRBは金利の引上げに動きたいところだけれど、しかし皮肉なことにドル高が進行したことでグローバル企業の業績が凹んでいる。欧州、中国への影響も無視できない。

緩和マネーで、この二年間で株価が大きく上昇してきた日本も、いまでは上海リスクが気になるところ。

さて、ざっくり全体を俯瞰した上でプラチナを見てみると。

まず、プラチナの市場は、ゴールドの市場の1/20程度に過ぎない。ゴールドも稀少性は高いのだが、プラチナの方が希少性では圧倒的。年間産出量だけを見ても、ゴールドの3000トンに対して、プラチナは200トンにも満たない。じつに微々たるものである。

供給面でのもう一つの特徴は、ゴールドの生産地が世界各地に分散しているのに対し、プラチナは南アがおよそ7割強を占めている。つまりプラチナの供給は、南アという国の情勢に大きく左右される面があるということ。しかも南アの鉱山は、鉱山労働者の賃金上昇圧力と電力供給不安をつねに抱えている。ここで問題が起きると、どのようなことが起きるか想像に難くないだろう。これまでも数年に一度くらいの割合で、この問題が顕在化している。

一方の需要はどうか。最大需要のディーゼルエンジン自動車の排ガス触媒が4割強を占めている。その次が宝飾品で3割強。つまりプラチナの需要は景気に大きく左右されるわけ。通貨としての顔を持つゴールドとは、この点が大きく異なる。そして、最大需要のディーゼルエンジン自動車の排ガス触媒の主要なマーケットといえば、それは欧州なのである。

冒頭に載せた過去10年のプラチナ価格の推移を見てみよう。ちょうど10年前の価格水準が800ドル台、そしてリーマンショック後に急落した際の価格がやはり800ドル台の水準。その後持ち直したものの、リーマンショックが欧州に伝染し南欧の債務不安から景気が冷え込み、ズルズル下げて現在の1000ドル水準に至っている。10年のレンジで見る限り、底値まで200ドル。ここに来て下げ足を速めているのは、ギリシャ問題が長引いているからだ。

つまり欧州から(そしてプラチナから)投機マネーが引いているというのが実情だろう。投機マネーが引いたところが、個人の出番だと思っているわけだ。

あとはEUがギリシャ問題を乗り切るかどうか。個人的には、ギリシャのデフォルト、ユーロ離脱はあり得ると思うのだけれど、EUからの離脱はないと見る。

そう思う理由は二つ。

一つは、最近の欧州には「地中海国境」という防衛安全保障の考え方があるということ。このボーダーが隔てようとしているのは、云うまでもなく欧州と北アフリカ中東地域。そこに降って湧いたのが大量の難民である。ギリシャはその最前線にある。ゆえに仮にユーロからの離脱が起きてもEUからの離脱はないと見る次第。

もう一つは、ギリシャ政府について、これ以上の支援にEUは否定的な姿勢を通しているが、ここに来てどこからともなく「人道的見地」という言葉が聞こえるようになったこと。そうでも言わないことには、ギリシャの銀行に資金を入れることに、国内世論の賛意を得られないということなのではあるまいか。スサノオのような荒くれギリシャだが、人道的見地という方便を使うことで、メルケルもギリシャに支援の手を差し伸べることが可能となる。だからギリシャの破綻、ユーロ離脱はあっても、EU離脱はないと見ているわけ。

以上は、あくまでの個人の見解。明日のことは、誰にも分からない。けれど、ゴールドもプラチナも実物の資産であって、価値が破綻することはない。いつまでも値を崩し続けるとは思いにくいからコツコツ拾っている。1000ドルを割れば800ドルまであると思うけど、その時は大きく拾えば良いだけのこと。だから、5年、10年寝かせても大丈夫な資金を投じている。そうは云っても、たいした金額ではないけれど。

最後に。安倍政権の動きにキナ臭ささ感じている個人としては、貴金属現物への投資は、将来リスクに対する、ささやなかヘッジの意味もある。


欧州雑感07:弱い国が強い通貨を持つ悲劇
欧州雑感06:スペインが熱い
欧州雑感05:イタドリという外来種
欧州雑感04:二つのグループ
欧州雑感03:内部の宗派対立
欧州雑感02:統合か愛国か
欧州雑感01:地中海国境という言葉

チャート出典:kitco

by naomemo | 2015-07-10 11:43 | →はじめての金読本