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昼はハリウッドのスタントドライバー。そして夜は強盗の逃走を請け負うドライバー。昼と夜が「ドライブ」という行為でリンクしている。どちらにも感情が入る余地はないように見える。

そのクールで孤独な男を演じているのは、ライアン・ゴズリングというカナダ出身の俳優。カッコいいのだ、こいつが。

けれど、なぜかいつも口に楊枝をくわえている。どういう暗示だろう?と思いつつスクリーンを見つめていて浮かんだイメージは、「木枯し紋次郎」。「あっしには関わりのねえこって」などとは言わないけれど、そんな雰囲気を醸し出しつつ、やはり関わって行くんだよ。ひょっとしたら監督が熱烈な紋次郎ファンなのかも知れない。

つまり、クールで孤独な魂が、あることをきっかけに変貌することになるわけだ。ライアン・ゴズリング演じるドライバーの場合、それは同じアパートに済む母子との出会いだった。

クールで孤独な魂は少しづつ発熱していく。

孤独な魂が孤独であるうちは保たれていたバランスが、その出会いを契機にゆっくり崩れ始める。いつのまにか口の楊枝も消える。そして昼の重力が増すごとに、夜の重力も増して来る。深いね。脚本のチカラを感じる。

やがて彼女の夫が刑務所から出所してくる。その夫の背後には、大きな闇が広がっている。闇は次第に成長し、孤独なドライバーを飲み込んで行く。

激しい暴力のシーンがある。たっぷりと血が流れる。

若く美しい母親役を演じているのはキャリー・マリガン。「17歳の肖像」から観ているけれど、だんだんチャーミングになって行くね、彼女は。あ、違うな、「プライドと偏見」にも出演してたようなので、その時から観てることになる。

監督はデンマーク生まれのニコラス・ウィンディング・レフン。ライアン・ゴズリングとキャリー・マリガンがお気に入りになったようで、それぞれを起用した新作の準備に取りかかっているらしい。楽しみだ。

ドライヴの予告編はこちら。




by naomemo | 2012-04-10 17:19 | シネマパラダイス

二年ぶりの桜見物

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いうまでもないことだけど、去年の春も桜は咲いた、に違いない。
「今年は桜が不調で残念ながら開花しなかった」
などというニュースを見聞きした覚えはないから、咲いた、はずだ。
去年の今頃の時期には、朝晩、通勤途上にある桜並木を見ていた、はずだ。
けれど、見ていたはずなのに、記憶のなかに去年の桜が存在しない。
桜の景色が記憶の中からすっぽり抜け落ちている。

311直後の緊張感から、桜見物どころではなかったのだろう。
去年の今頃に季節は、まだ余震が続いていたしね。
このブログも当然のごとく途絶え勝ちになっていたけれど、
いま過去ログを見てみたら、こんなことになっている。
3月12日「2011年3月11日、東日本大震災の夜、渋谷」
3月14日「2011年3月14日、午後13時、新宿」
3月16日「名古屋の兄貴への返信メール」
3月21日「1キロ10円の義援金」
3月24日「ミネラルウォーターがまた消えた」
4月12日「余震が続く」
4月19日「芽が出た」
4月21日「陣馬山を歩く」

4月下旬になって、ようやく吹っ切ろうという気分になって、
友人家族と一緒に陣馬山を歩いたんだろうなと、いまになって思う。

さて、記憶の話に戻るけれど、おそらく、美しいとか汚いとか、
面白いとかつまらないとか、嬉しいとか哀しいとか、
感情や感覚を伴わない体験は記憶に残りにくいということなんだね。

なんて理屈っぽい話はここまでにして、
先週の土曜日、千鳥ヶ淵まで桜見物にやってきた。
twitterとfacebookに写真を流したけれど、
ここに記録として再録しておこうと思う。
当日は花曇りで青空が覗けず、全体に暗いけれど。

千鳥ヶ淵は桜並木の下を行き交う人で大渋滞。
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インド大使館の二階でダンスの練習なのかな?
さくらフェスティバルが行なわれていたし。
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靖国神社の参道横では花見客の酒盛り。
でも当日はとても寒くて、温かい酒が欲しかっただろうな。
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「下乗」と書かれた大きな立て札がある。
ここで馬から降りなさい、あるいは馬車から降りなさい、と。
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本堂(?)の真っ正面から一枚。
このあと、お賽銭をなげて、一礼、二拍手、二礼(だったか)。
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だんだん空気が冷えてきたので、南門から半蔵門へ。
最後の一枚は、桜のなかの桜という感じで。
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おそまつ。あ、そうだ、最後にひとつ。
じつは地元のたまプラーザ駅周辺には桜並木があって、
この時期、朝に晩に、桜のトンネルの下を歩いているのだけれど、
それはそれとして、ここ数年、春の桜見物といえば、
目黒川をゆったり往復することにしていた。
でも、今年は思うところあって、千鳥ヶ淵にした。
で、気づいたのだけれど、目黒川の桜は色が濃い、
そして、千鳥ヶ淵の桜は色が浅い、ね。
花曇りだったことも、いくばくか影響しているかも知れないけれど、
おそらく目黒川の桜と千鳥ヶ淵の桜は品種が違うね。
おなじソメイヨシノなんだろけど、ちと違う気がする。
気がするだけで、なんの論拠もありませんし、
だからどうだと言われて、返す言葉もございませんが。

by naomemo | 2012-04-09 14:02

音楽の身体に触れた夜

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先日、イタリア文化会館で催された「ヨーロピアン・バロック音楽フェスティバル第1回」に足を運んだ。フェスティバルとは銘打ってあるが、それは大袈裟で、ありていに言えば古楽器によるバロック・コンサートだ。ただ、EUNICジャパンという組織が中心となって主催していて、つまりはEU文化機関による欧州音楽文化の広報活動という位置づけにあるのだった。イタリア文化会館を皮切りに、各国が持ち回りで開催するらしい。第2回の日程は未定、どこの国が運営にあたるかアナウンスしてたけど、忘れた。

ま、そんなことは私にはどうでもよくて、心地よい音楽の時間が持てたことで大満足なのだった。

今後、出演者が変わるのか変わらないのか不明だけど、今回は古楽演奏グループOrchestra Libera Classicaの音楽監督である鈴木秀美さん(チェロ)、メンバーの荒木優子さん(ヴァイオリン)、上尾直毅さん(チェンバロ)、そして声楽アンサンブルLa Fonteverdeの中心メンバー鈴木美登里さん(ソプラノ)の四名による親密な室内楽演奏会だった。

いつもとおり、まるで熊さんのようにバロック・チェロを抱きかかえるようにして弾く鈴木秀美さん、じつに愉しげに身体でリズムを取りながらチェンバロを弾く上尾直毅さん、どこまでも透明で艶やかな素晴らしいソプラノで歌う鈴木美登里さん、そして、まるで自分の深い呼吸に合わせるかのようにヴァイオリンを弾く荒木優子さん。奏者の身体と楽器が渾然一体となった、じつに愉しい一夜だった。

なかでも、荒木優子さんの、まるで吐息のようなヴァイオリンには心を奪われた。彼女のバッハをぜひまた聴きたいものだ。一目惚れならぬ、一夜惚れ。

当日のプログラムはーーー
●「主をたたえよ」
 クラウディオ・モンテヴェルディ(イタリア)
●チェロと通奏低音のためのソナタ ニ長調
 ゲオルク・フィリップ・テレマン(ドイツ)
●ソナタ ルビオ番号54番(デ・クラリネス)ハ長調
 アントニオ・ソレル(スペイン)
●「マリツァパロス」による変奏曲
 作者不詳(スペイン)
●ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト短調 BWV1021
 ヨハン・セバスチャン・バッハ(ドイツ)
●「簒奪者にして暴君」
 ジョヴァンニ・フェリーチェ・サンチェス(イタリア、オーストリア)
●チェロとバスのためのソナタ ハ長調
 ルイジ・ボッケリーニ(イタリア、スペイン)

〈20分の休憩〉

●第6旋法による戦い
 アントニオ・コレア・ブラガ(ポルトガル)
●ソナタ「かっこう」
 ヨハン・ハインリッヒ・シュメルツァー(オーストリア)
●聞いて下さい/ああ、そうだ、いや、違う!
 ホワン・イダルゴ・デ・ポランコ(スペイン)
●ソナタ第71番 イ短調
 ジョゼ・アントニオ・カルロス・デ・セイシャス(ポルトガル)
●ロザリオのソナタ第10番「磔刑」
 ハインリッヒ・ビーバー(オーストリア)
●恋のリラにのせて
タルクイニオ・メールラ(イタリア)

この順番を見ただけで、なんとも慌ただしい団体旅行のようで。演奏前に一曲一曲、曲目の紹介を日本語と英語でされる鈴木秀美さんも重々承知で、主催者側の要請とはもちろん口にはされなかった。でも、そんな慌ただしい演奏旅行が愉しかったのは、ひとえに鈴木秀美さんの人柄とメンバーの演奏のクオリティの高さによるものだったに違いない。

by naomemo | 2012-04-05 18:44