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しばらく前に、モーツァルトのレクエイムを紹介したばかりなので、ちょっと気が引けるんだけど、今回の「今週の一枚」はフォーレのレクイエムです。

いやなに、レクエイムが三度の飯より好きとかいうんじゃありませんよ。じつは昨晩、録りためてある映画でも一本と思い、怖ーい、怖ーいゾンビ映画ということで評判だったダニー・ボイル監督の「28日後…」を観ていたら、なんと、お終いの方で流れ始めたのがフォーレのレクイエムだったんですよ。

あとで久しぶりに手持ちのCDを聞き直してみて、やっぱりいいなあと思ったので、忘れないうちに「今週の一枚」の仲間に入れてあげようと。指揮ミッシェル・コルボ、演奏ベルン交響楽団、昔から名盤の誉れ高いアルバムです。

ちなみに、モーツァルトのレクエイムにもヴェルディのレクイエムにも、「怒りの日」ってものがある。なかなかに激しい場面があったりもするんだけど、フォーレのレクイエムに「怒りの日」はない。フォーレは、人生の最後に「怒り」はふさわしくないと考えていたらしいんですね。

そのおかげもあってか、とても静かな曲です。なんていうか、寒い冬の晩に、純白の雪が、しずかに降り積もっていくような、そんな感じの曲です。秋から冬の季節が似合う一枚でしょうか。

それにしても、レイジ(憤怒)・ウィルスが跋扈する映画に、憤怒がないレクイエムを使うなんて、監督が考えたのか、音楽担当が考えたのか知らないけれど、じつに粋な選択だね。拍手です。

by naomemo | 2009-10-30 07:53 | 音楽から落語まで

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昨日に引き続いて、ハリウッドつながりで一本。ちょっと前になるんだけど、恵比寿ガーデンシネマで「キャデラック・レコード」を観た。主演はエイドリアン・ブロディ。彼の出演作品を観るのは5作目になる。「戦場のピアニスト」「ヴィレッジ」「ジャケット」「ダージリン急行」、そして「キャデラック・レコード」。なんとなく気になる俳優なんだよね。

さて、エイドリアン・ブロディ扮するレナード・チェスは、実在の人物で、ポーランドからのユダヤ系移民である。チェスの出自に言及されるのは冒頭のワンシーンだけなのだが、おそらく相当な差別の中で成長したのだろうと思わせる。そしてそのことが、後年、音楽ビジネスに邁進する原動力になったように見える。少なくとも、この映画ではそのように暗示されている。

少し寄り道をする。そのレナード・チェス役だが、当初はアイルランド系アメリカ人のマット・ディロンが当てられていたようだ。しかし、理由は定かではないが、降板して、エイドリアン・ブロディに白羽の矢が立ったという。ちょっと出来過ぎの感もあるが、彼自身、ポーランド系ユダヤ人の血を引いていることと無縁ではないだろう。なにしろハリウッドはユダヤ移民が作った街なんだから。いずれにしても、「戦場のピアニスト」といい、今回の「キャデラック・レコード」といい、ポーランド系ユダヤ人といえばエイドリアン・ブロディと相場が決まったかのようだ。

肝心の映画の内容をひとことで言えば、シカゴ・ブルース全盛を作った伝説のレーベル「チェス・レコード」の誕生から衰退までを描いた作品である。タイトルが「キャデラック・レコード」となっているのは、ヒットが出ると、その歌手に豪華なキャデラックが与えられたから。つまり、この映画は、キャデラックという米国を象徴する自動車が光り輝いていた頃の物語でもあるのだ。

チェス・レコードは、チェス兄弟(映画ではレナード・チェスひとりに集約されているが)が、1950年に立ち上げたレーベルである。アフリカ系の黒人たちと契約して、以後20年間にわたってレーベルを発展させた。被差別民族という共通点があったためか、チェス兄弟には黒人への差別意識はきわめて薄かったようだ。というより、まずビジネスありきにとって、差別意識など邪魔ものだったに違いない。

このことはジャズの名門レーベルであるブルーノートの創立者アルフレッド・ライオンがドイツからの移民で、やはり人種差別感情から遠かったことに似ている。ま、そもそも米国は移民の国だったんだけどさ。

かたや、まず商売ありきのレナード・チェスとフィル・チェス兄弟のチェス・レコード。かたや、アメリカ文化とジャズへの憧れが根底にあるアルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフによるブルー・ノート。双方ともレコード史では重要な役割を果たしたが、紆余曲折を経て最終的に残っているのはブルー・ノートの方だ。いまでも往年のジャズの定番として存在しているんだけど、でも、映画になったのは、チェスの方でした。

ずいぶん脱線してしまったが、この映画、ブルース・シンガーたちが放つ熱いオーラと、経営者レナード・チェスが放つ冷たいオーラの対比が際立っていて面白かった。エイドリアン・ブロディの虚空を見つめているような眼が、なんともいえないね。

レナード・チェスにエイドリアン・ブロディ。チェス・レコードの初期を支えたブルースの帝王マディ・ウォータースにジェフリー・ライト、この人ブロークン・フラワーズでもいい味を出していたっけ。エタ・ジェイムスにビヨンセ・ノワルズ。チャック・ベリーにモス・デフ。そしてチェス・レコードの後期を支えたハウリン・ウルフにイーモン・ウォーカー、この役者、救命救急室ERにも何回か出演していたらしいけど、もの凄いド迫力。そのうちに大役をしとめるかも知れないな。脚本、監督にダーネル・マティン。どういう人だか知らない。そして製作総指揮にビヨンセが名を連ねている。



by naomemo | 2009-10-29 08:27 | シネマパラダイス


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米国を代表する映画産業の街として知られるハリウッドが、不況の波に飲み込まれているようだ。

今朝の朝日新聞によれば、ハリウッド映画の制作費の平均は一本あたり約64億円にのぼるとか(ロサンゼルス経済開発公社調べ)。米国で長く続いたバブル経済を背景に、近年とくに出演料や制作費が高騰していたことが大きな要因のようだ。

その莫大なコストを回収するための帰結として、とにもかくにも大勢の観客に受ける作品が良い作品とされ、マーケティングで映画が制作される傾向が強くなった。冗談じゃないよね。当然のことながら、作家性や作品の質は二の次となり、質の低下が顕著になった。

そこに100年の一度の不況の波が押し寄せ、二つのニーズが出会った。ひとつは巨額のマネーが動く映画産業を誘致したいという全米各州のニーズ。もうひとつは割高なハリウッドを離れて制作コストの削減に動きたいという映画会社のニーズ。全米各州が補助金の提供したり税優遇制度の設置したりして誘致にしのぎを削っているという。

たとえば車産業衰退に直面するミシガン州では、産業の多様化が急務ということもあって、ゼネラル・モーターズ所有のビルが映画スタジオに変身中とか。同州のとある高校では新設したキャンパスをテレビ番組の収録に提供しているとか。なんだかヘンな話だけど、そうなんだね。

ちなみに同じ英語圏である英国ではどうか。いくつかの情報から勘案するに、制作費の平均は一本あたり10億円程度だろうと思われる。ハリウッドの1/6である。ところが、作品の質については英国作品の質の方が圧倒的に高い。好みもあるので判断が難しいところだが、少なくとも僕はそう思っている。昨今のハリウッド映画は、あまりにも幼稚なものが多いのだ。大金を投下することが、かえって首を締める結果になっているね。お金さえかければいいってもんじゃない。これも強欲のツケに違いないね。

by naomemo | 2009-10-28 12:45 | シネマパラダイス


文太さんとは、「仁義なき戦い」シリーズや「トラック野郎」シリーズで一世を風靡した、あの菅原文太さんのことである。愛息を事故で亡くされたことも記憶に新しいし、一昨年、膀胱ガンを発症するも、仕事を続けながら治療をうけ、全快されたことでも知られている。その文太さんが、このたび山梨県の北杜市に農業生産法人を立ち上げたそうだ。

某テレビ番組で観たのだが、インタビュアーの質問に、かんがえ、かんがえ、とつとつと受け答えする姿に好感が持てた。そしてその話の内容にも感銘を受けた。もともとベラベラと多くを語る人ではないが、これまでの農業のあり方についても、これからの農業のあり方についても、きちんと一家言を持っているなという感じ。自分たちも食べ、ひと様にも食べていただくんだから、おいしくて健康に良い農作物を作っていきたい、と。そのためには、小さな農業、目の届く範囲の大きさの農業をやるんだと。彼の話ぶりでは、これからの若い人たちが農業に入ってきやすい環境づくりに一役買って出るつもりもあるんじゃないかな。そんな感触を得た。なんだかいい話でしょ。

北杜市といえば、僕の友人が窯をもって陶芸をやっているところでもある。もちろん本業である。以前は、東大の赤門近くの画廊で毎年のように個展を開いていたのだけど、最近は地元での活動に軸足を移し、ときどき友人たちと展示会を開いているらしい。ずいぶん会っていないので、ちかぢか足を運んでみようかなという気分になった。もちろん、文太さんの農地を拝見がてら、ね。

最後に、ちょっとだけ政治の話。正式な手続きもなしに日本郵政のトップに元大物次官が内定したり、無駄の排除が進められるはずなのに来年度の予算要求規模が膨張したり、なんだか雲行きが怪しげになってきたね。なかでも厚生労働省が気になるね。消費税の論議もせずに、安易に国債発行に依存するのはアカンのじゃないか。大丈夫かな。ヤバイ感じだね。政治家や役人諸氏には、文太さんの爪のアカでも煎じて飲んでもらいたいものだ。

by naomemo | 2009-10-23 12:45

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今朝の日経新聞に、『「ちょい古」映画 劇場で安く』と題した記事があった。文脈から、名画座が人気になっているように読める。もしその通りなら、一映画ファンとしてもうれしいことだけど、いささかマユツバだなあという感じがしないでもない。

たとえば僕の場合は、基本的に単館やシネコンで新作を観ているのだけれど、かなりズボラな映画ファンゆえ見逃すこともしばしば。というわけで、ときどき名画座のお世話になっている。でも、これまで行列が出来ている場面に出会ったことはない。

記事に取り上げられている飯田橋のギンレイは、都内の名画座の中では人気館だろうけれど、行列が出来た背景に定額の年間パスポート(シネマクラブ)があることは明瞭で、そこに今回たまたまスラムドッグ・ミリオネアという超人気作品が重なったということなのだろう。

年間パスポートの仕組みを導入しているのは、都内ではギンレイだけじゃないかな。これまでのところ他館が追随する気配はない。おそらくギンレイは作品のチョイスと集客に自信があり、2週間の買い切りにしているのだろう。一方、他の上映館は、そこまで踏み込めない事情があり、歩合制に甘んじているのだろう。

ま、でも、この記事がきっかけになって、名画座に一般の目が向くのは良いことだね。記者も大の映画ファンで、昨今の映画館の不振を憂えて、あえて記事にしたと思いたい。それなら賛成、ケチをつける筋合いのものではないです。

ちなみに都内には、12館の名画座がある。

銀座シネパトス
シネマヴェーラ渋谷
新文芸座
目黒シネマ
早稲田松竹
浅草中央
浅草名画座
浅草新劇場
ギンレイホール
新橋文化
三軒茶屋シネマ
三軒茶屋中央

それぞれ特徴があって面白い。僕がときどきチェックしているのは、目黒シネマ、早稲田松竹、ギンレイ、新橋文化、三軒茶屋中央の5館だけだけど。

最後に、以前にも紹介したけど、名画座の上映情報を紹介しているサイトがある。興味のある向きは、こちらの「魅惑の名画座」へどうぞ。

by naomemo | 2009-10-20 08:40 | シネマパラダイス

久しぶりのゴルフコンペ


日本中がゴルフ日本オープンの最終日決戦に沸いた昨日、20名ほどのゴルフコンペに参加していた。「まんさん会」という名のコンペで、年に2回ほど開催されているものだ。すでに4、50年ほど続いているという。

長く続いているというだけじゃなく、常連参加者にエイジシューターが2名いるし、ときどきアンダーパー(グロス)で上がってくる人がいるし、ほんとレベルが高い。僕はハンディキャップ15で出てるんだけど、この会ではなかなかスコアがまとまらなくて、いいいとこなし。そろそろ2回目の優勝を、と思ってはいるんだけど、いつになることやら(笑)。

コースは毎回変わる。昨日は大宮国際カントリークラブ。河川敷のコースである。ここをラウンドするのは初めてだったこともあり、甘く見ていた。河川敷だから、グリーンは小さめだし、砲台だしというのは当然だけど、ここは距離もしっかりあって、ハザードもうまく配置されていて、けっこうタフだった。

なおかつ45ホールもあって、河川敷とは思えないね。距離のあるレンジも用意されているし、アプローチやバンカーの練習場もあるし、もう一度「ひそかに」腕を磨き直したいという向きにはいいところかも知れない。都心からも近いし。ちょっと考えてみようかな。いっぱい詰め込むらしいけれど…。

by naomemo | 2009-10-19 08:21



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いまの小学校ではどうなっているのか知らないが、僕が小学生だった頃には、音楽室ってものがあった。たしか教室前方に、オルガンだったかピアノだったか、とにかく鍵盤楽器が一台置いてあってさ、後方の壁面には著名な作曲家のイラスト入りの年表がかかっていた、と思う。かなりあやふやな記憶なんだけどさ。

あの大きな年表には、誰のイラストがついてたんだろうなあ。なんとなく覚えているのは、バッハ、ヘンデル、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ドヴォルザーク…くらい。それが、みんなオジサンのはずなのに、髪が長くて、こわい女の人みたいでヘンな感じ、だったなあ。あの、くりくりパーマのかかった長髪が、じつはカツラだって知ったのは、ずいぶん経ってからだった。

なんて書くと、当時からクラシックを聴いてたのかと誤解されても困るので、急いで否定しておきます。そんなことはまったくありません。とにかく友だちとドロンコになって遊んでるのが好きで、机の前でじっとしていることが苦手だったんだけど、でも、不思議と音楽室の雰囲気だけは好きだったんだよねえ。

さて、マクラが長くなってしまったけど、久しぶりに今週の一枚。JSバッハのブランデンブルグ協奏曲。

バッハの音楽って、鬱蒼としたドイツの森のような、というか、明治の頑固な親父のような、どっしり感が売りなのかも知れないが、僕はいつの頃からかイタリアの演奏家で聴くようになった。キッカケになったのが、イル・ジャルディーノ・アルモニコという、ミラノに拠点をおくグループの演奏。初めて聴くと腰が抜けるかも知れないけれど、けっしてお行儀の良いバッハじゃないけれど、元気いいよー。艶やかで、鮮やかで、軽やかなバッハがいる。これが、はまると、けっこう快感なのだ。

バッハはヴィヴァルディの音楽をこよなく愛し、いろいろヴァリエーションを作って研究していたらしい。その集大成がブランデンブルグ協奏曲だというから、ひょっとしたらバッハがイメージした音に近いかも知れない、なんてね。ちょっと言い過ぎかな。

by naomemo | 2009-10-16 08:21


週末に、先日紹介した内藤正典著「イスラムの怒り」を読み終えた。今回は、そのメモというか感想です。

ヨーロッパには、いま数千万人にのぼるムスリム(イスラム教徒)が住んでいるという。ヨーロッパ各国で進んだ自由化、労働市場開放の結果であろう。「市場開放」というと聞こえは良いが、ありていに言えば、安い賃金で、誰もやりたがらない仕事をしてもらうために、ムスリムの移民を受け入れたということだったのだろう。

相手は、たしかに「安い労働力」だったのかも知れない。国際競争力の強化という観点から「安い労働力」の導入は必要なことだったのかも知れない。けれど、その前に「生きた人間」であることが忘れ去られていた。しかも、相手は、考え方も異なれば、文化も異なれば、生活習慣も異なる、ムスリム(イスラム教徒)である。「安い」はずが、どうも「高く」つく結果になりつつあるようだ。

だいたい、西ヨーロッパのキリスト教は、イスラム教を異教として敵視し、あげくに聖地奪回を大義名分に十字軍なんていうケッタイなものを仕立て上げ、何度も侵攻した歴史がある。資源確保目的で中東を分断してきた歴史もあるし、イスラエル建国を後押しして現在の中東情勢混迷の種を撒いてきたという歴史もある。そうしたヨーロッパが、なぜムスリムへの理解促進や融和を怠って、移民を自ら積極的に受け入れて来たのか。蔑みの意識が、読みや判断を狂わせたのかも知れないな。

そして、もともとムスリムへの差別が根深いところに、911が発生した。差別はさらに進んだ。ムスリムの不満は高まるばかり。それゆえ衝突が激化しつつあるともいう。

ヨーロッパのムスリム問題は、経済効率、自由化の恩恵を盲信してきたことへの代償と言ってもいいかも知れない。社会は金融や経済だけで出来上がっているわけじゃないことを、あらためて教えてくれている。コインには、表もあれば裏もある。良いことがあれば、その背後には悪いことも隠れているという大人の知恵を、忘れちゃいけないんだね。

なお、この「イスラムの怒り」の著者は、米国の大統領バラク・フセイン・オバマが、父方からムスリムの血を受け継いでいるという自らの出自に言及して、イスラム社会との融和を図る発言をしたことに、大きな危惧を抱いている。今後、米国がアフガニスタンへの軍事介入を強化すれば、ムスリムに大きな期待を抱かせたことが、かえってアダになるだろうと。ノーベル平和賞を貰ったんだけどねえ…。

今日は少し重い話になってしまったが、「イスラムの怒り」は、じつに面白い本だった。目からウロコが何枚も落ちました。そして、英国における移民問題を扱った、ケン・ローチ監督の「この自由な世界で」を、もういっぺん観たくなってきた。そしてもう一本、イスラエル映画「シリアの花嫁」も、いつか、あらためてもう一度。すこし見方が変わるかも知れないので。

by naomemo | 2009-10-14 07:45


昨晩、自宅に戻ったところ、連れ合いが、ノーベル平和賞、誰が受賞したか知ってる?と聞いてきた。ノーベル文学賞と聞き違えて、たしかルーマニア出身のドイツ人だったっけかなあ、なんて大ボケをかましてしまった。

平和賞よ、と突っ込まれて、知らない、と答えたら、オバマ大統領だって、と。えっ、どういうこと?

正直、驚いた。だって、たしかに地球温暖化、国際協調、核軍縮というメッセージは発信しているけれど、どれもこれからが本番であって、まだ結果は出てない。ノーベル賞委員会は何を考えてるんだろう。いろいろ思いを巡らせてみた。

これまで、ノーベル賞というのは、過去の実績に対して与えられるものだった、と思う。でも、今回のように、将来への希望に対して与えられるのは、きわめて異例なことだろう。別の見方をすれば、ブッシュ政権の8年がもたらした傷がそれだけ深いということでもあるのだろうけど。

戦争から平和へ舵を切ろうとしているオバマ米国大統領に、戦争をメシの種にしている勢力から強いプレッシャーがかかっていることを感じ取り、側面支援しようという意図なのかも知れないなあ。でも、今回の決定は、意図は理解できるけれど、かえってオバマを窮地に陥れることにつながるんじゃないだろうか。それが心配。戦争遂行勢力を、必要以上に刺激してしまったんじゃないかなあ。いちばん困惑しているのは、オバマ自身じゃないかなあ。

by naomemo | 2009-10-10 08:18


金価格が史上最高値を連日更新している。どうみても過熱気味だし、高値を更新した達成感から調整されても不思議はないのだけれど、なかなか下がらない。なんでしょね、これは。新たな段階に移行していくサインなのだろうか。

金価格は1999年に大底を打ち、2001年の春からゆっくり上がり始めたのだが、この機会に背景を整理しておくのも悪くないだろう。この10年を時系列で振り返ってみたい。

いまから思えば、最初の動機は、たぶん、ドルに対抗しうる通貨として、欧州統一通貨ユーロが誕生したことだろう。ベルリンの壁が崩壊した後、世界はドル一極に傾斜していくことになるのだが、「もはや金は必要ない、有事にはドルがあればよい」と言われ始めた矢先、まさにドルの絶頂期に、ユーロは誕生した。それは1999年1月のことだった。

二つ目の動機は、同じ年の9月、欧州の中央銀行間で、金の売却と貸出しを制限する協定(The Central Bank Gold Agreement/通称「ワシントン協定」)が取り決められたことだろう。この協定は、外貨準備として保有している金準備の重要性があらためて確認されたという意味で、そして、おそらくユーロの誕生とリンクしていたという意味で、インパクトは大きい。

三つ目の動機は、好戦的なブッシュ政権が、2001年の911テロをきっかけに、アフガニスタン空爆、イラク戦争開戦へとのめり込んでいったことだろう。偽の情報を掲げて開戦したことが判明しているので、すでに大義名分もないのだが、いっこうに出口は見えない。イスラム圏だけでなく、世界中で米国離れが進んでいるとみて良いだろう。

四つ目の動機は、中国の金解禁。2002年10月に上海に金取引所が開設されたことからも判るように、金選好度の高い中国で、金が解禁され、金取引の自由化が進んでいる意味は大きい。ちなみに、中国は、国家レベルでも、ドルに偏重していた外貨準備を分散すると表明しており、その一環として金準備の強化を進めている。なお、米国と対峙しているもうひとつの大国ロシアも、外貨準備の分散を始めているようで、金準備を少しずつ増やしている。

五つ目の動機は、2005年頃から、年金基金が金市場に参入し始めたことだろう。株式市場や債券市場では、すでに年金基金は重要なポジションにあるが、金市場においても頭角を現しつつあり、つねにその動向がウォッチされるようになっている。

六つ目の動機は、2007年の住宅バブルの崩壊とサブプライム・ローン問題の発生、その流れの延長線上で起きたリーマン・ブラザーズの破綻と異常ともいえる財政出動と超金融緩和。ちなみにドルの短期金利は、2007年7月5.26%だったが、2009年9月は0.15%まで下がっている。直近のドル安は、この超金融緩和の長期化が背景にあることは明らかだろう。

こうしてこの10年を振り返ってみると、金価格上昇とは、つまるところ基軸通貨ドルの大きな揺らぎと言い換えることができるのかも知れない。かくして、寡黙な金が饒舌になったわけだけれど、金が饒舌になる時代とは、混沌の時代とイコールと言っても良いだろう。今は、時代の大きな転換期にあるのだろう、たぶん。

by naomemo | 2009-10-09 08:31