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先月、海洋火山学者で熊本大学准教授の横瀬先生を取材すべく熊本へ。火山と鉱床の深い関係について、くわしいお話を伺うことが出来ました。じつに貴重な二時間でした。

あらかた取材が終わってから、貴金属業界で静かに流布する都市伝説について尋ねてみました。ところで先生、プラチナって、隕石に乗って宇宙からやって来たという説があるのですが、どう思われますか?

即座に、簡潔明瞭な回答が返って来ました。

それにしても、地質について、鉱床について、海洋について、これほど広く深く複眼的に捉えられる研究者はいないのではなかろうか。前向きだし、元気だし、ほんとによく笑う人です。

先生、ひとたらしですね、と云ったら、うれしそうに笑っておられました。仕事をする上で、ひとたらしであることは、とても大切なこと。

さて、その都市伝説についてのココロとは?5月30日に開催されるゴールドフェスタで明らかになる!?興味のある向きは下記サイトにて参加申し込みを。

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by naomemo | 2015-03-20 07:01 | →はじめての金読本

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はじめての金読本、移植第9弾です。2010年02月22日に公開した原稿に手を入れたものです。今回も初心者向けの内容となります。

前回、金価格には「ふたつの局面」があると紹介しました。それは「国際的に取引される局面」と「国内で取引される局面」であり、両者の間には「為替」という変数が介在しているということでした。

さて、国内の店舗で実際に取引される価格も、別の意味で二本建てになっています。ひとつは「金小売価格」であり、もうひとつは「金買取価格」です。

金小売価格とは、一般の人が店頭で金を買う際の価格で、たとえば5000円/gというように、1グラムあたりの円建て価格で表示されています。そして一方の金買取価格は、一般の人が店頭で保有金を売る際の価格で、4915円/gというように、やはり1グラムあたりの円建て価格で表示されています。店頭においては、どちらも消費税込みの価格になっています。(※)

この金小売価格と金買取価格との間には、スプレッドと呼ばれる価格差があります。その価格差は取扱業者によって若干異なるものの、おおむね80〜90円/gの幅で設定されています。

したがって、金小売価格が上がれば、それに応じて金買取価格も引き上がります。もちろん、その反対に小売価格が下がれば、金買取価格も同時に下がります。金取引では、小売価格と買取価格が一対になっていることが、恣意的な価格設定を抑制する役割を果たしていると言うこともできます。

ただし、この価格差は常に必ず一定というわけではありません。取引時間中に国際金価格やドル円為替相場が大きく変動した場合に、価格が変更になることがありますが、時にその変動を吸収するべく価格差も広がる場合もあります。この点は頭に入れておくとよいでしょう。


イラスト:三井孝弘さん


(※)
ちなみに、商品の販売価格の表示に関して、2004年に「総額表示」(消費税額を含んだ価格での表示)が法律で義務づけられました。そのため、金やプラチナなど貴金属の小売価格、買取価格も、現在は総額表示となっています。しかし、2014年4月に消費税は5%から8%へ引き上げられました。近い将来、10%への引上げも実施されます。そうした背景から「総額表示」の法律も改正され、流通業界では現在、「本体価格+税」という表示を採用するところが増えていますから、そのうちに価格表示も変わるかも知れません。



by naomemo | 2015-03-18 05:16 | →はじめての金読本

国際金価格と国内金価格


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はじめての金読本、移植第8弾です。2010年02月05日、02月12日に公開した原稿に手を入れたものです。

金は、太陽の動きを追いかけるかのように、世界のどこかの市場で取引が行われています。シドニー、東京、香港、チューリッヒ、ロンドン、ニューヨークという具合に、時差を追って取引は受け継がれていきます。さらに、インターネット上の取引が主流になった現在、「NYグローベックス」という電子取引システムがほぼ24時間稼働しており、金価格は、休日を除いて、ほとんど眠ることなく動いています。

ところで、一般に金価格と云う場合、ふたつの側面で捉えておく必要があります。ひとつは国際的に取引される際の金価格(国際金価格)であり、もうひとつは特定の国や地域で取引される際の金価格(国内金価格)です。それぞれ、グローバル金価格、ローカル金価格と呼んでも良いかも知れません。

国際金価格の方は、基軸通貨である米ドル建てで表示されます。この場合の重量単位はヤード・ポンド法のトロイオンスtoz(略してオンスoz)で、具体的には1,200ドル/ozというように表示されることになります。(※)

一方、国内金価格の方は、ドル建ての国際金価格を各ローカル通貨建てに換算して表示されます。英国であればポンド建て、ユーロ圏であればユーロ建て、中国であれば人民元建て。そして日本の場合は円建てで表示され、重量単位はメートル法のグラムとなります。

つまり日本における国内金価格とは、国際金価格をドル円為替レートに基づいて円建てに換算し、同時に重量単位をトロイオンスからグラムに変換して、グラムあたりの円建て金価格で表示されるわけです。その結果、5,000円/gというように表示されます。

こうした仕組みから分かるように、円建ての国内金価格は、米ドル建ての国際金価格に連動して動く一方で、ドル円為替相場によっても動きます。したがって、国際金価格が下がっても、為替がドル高円安に動けば、国内金価格はあまり動かない、というようなことも起きるわけです。国際金価格が上がり、なおかつ為替がドル高円安に動けば、国内金価格は大きく上がります。もちろん、その反対のケースもあります。

もう一歩だけ踏み込んでみましょうか。ここまで見てきた通り、国際的に取引される金の価格は米ドル建てです。これを日本人の立場から見ると、つまり、金にはドル建ての外貨資産の側面があるということです。この点はとても大切なので、別の機会に詳しく紹介します。

ここでは国内金価格は為替にも大きく左右されると覚えておいてください。


イラスト:三井孝弘さん


(※)
トロイオンスとは、貴金属の計量に用いられている特殊な単位で、別名を金衡オンス(きんこうオンス)ともいいます。グラム換算では、1toz=31.1034768gとなります。



by naomemo | 2015-03-13 07:00 | →はじめての金読本


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はじめての金読本、移植第7弾です。2010年01月25日に公開した原稿に手を入れたものです。

さて、この「はじめての金読本」の移植も、第2段階に入りました。これから、とびとびで3回にわたって、初心者向けの金価格の基本について紹介します。

まず、金には「定価」のようなものがありません、という辺りから始めましょうか。金の価格は、まるで生き物のように、つねに上がったり下がったりしています。(※)

なぜ価格が動いているのかといえば、それは株式などと同じで、買う人もいれば売る人もいるからです。買いが入れば上がり、売りが入れば下がり、さらに売りが入ればまた下がり、買い戻されればこんどは上がり、ということが延々と続いているためです。

身近な例で分かりやすく説明しましょう。ご近所の、たとえば食品スーパーで売られている野菜や魚介類の値段は、毎日同じというワケではありませんね。わずかのことかも知れませんが、毎日違うはずです。収穫量が多かったり、漁獲量が多ければ、つまり品が豊富にあれば、おおむね値段は下がります。その反対に、天候悪化などで品が薄くなれば、どうしたって値段は上がりますね。

金もそれと同じことで、金価格は金市場における売り買いのバランスで決まっています。基本的には、買い(需要)が勝れば価格は上がり、売り(供給)が勝れば価格は下がります。

金価格については、まずはこの点をしっかり覚えておいてください。

百聞は一見に如かず。下のチャートが、2015年3月5日AM7時半(日本時間)に見たドル建て金価格の直近3日間の動きです。金は、時差を追って一日24時間、世界のどこかで取引されていますから、時々刻々、上がったり下がったりしていることが分かります。(チャートをクリックすると、kitocoのライブチャートにジャンプします。)

(※)
ドル建て金価格は時々刻々と動いているのですが、日本国内での現物の円建て金価格は、朝9時半に発表されてから変更になることは稀です。それは、店頭での取引の便宜上、些細な変動は小売価格と買取価格の値幅のなかで、各社が吸収しているためです。ただし、ドル建て価格あるいは為替(ドル円)が大きく動いた場合には、変更になります。




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チャート画像出典:
http://www.kitco.com/charts/livegold.html


イラスト:三井孝弘さん



by naomemo | 2015-03-05 07:52 | →はじめての金読本

金利を産まない金の価値


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はじめての金読本、移植第6弾です。2011年11月11日に公開した原稿に手を入れたものです。

お金は、人から人へ、企業から企業へ、国から国へ動きます。もちろん企業から人、人から国へも動きます。社会のなかに張り巡らされた血管のなかをお金がぐるぐる回ってくれることで、社会生活や経済活動は成り立っています。

ぐるぐる動いた結果として利益が生み出されます。昨今とても微々たるものになっているとは云え、銀行は利益の一部を預金者に「利子」として渡します。一般企業の場合はたとえば「配当」という名目で分配します。

もう一歩、駒を進めてみましょうか。銀行も一般企業も資金の貸し手(=出資者)がいなければ存在しません。そもそも設立の原点に「貸し借り」というものがあるわけです。

貸し借りはもちろんタダではありません。そこで関与してくるのが「信用」です。信用が高ければ安い利子でお金を借りられます。しかし信用が低ければ高い利子を付けなければお金は借りられません。

どちらが利益を出しやすいかは云うまでもありませんが、それはさておき、お金は利子や配当と切っても切れない関係にあるわけです。利子や配当がついてこそお金としての存在価値があると云っても差し支えありません。

ところがここに利子や配当と無縁のお金がひとつあります。もともとお金であり通貨価値の拠り所と見なされてきた金です。金は社会のなかをぐるぐる動いて利子や配当を生み出すことがありません。

社会や経済のなかで流通するお金とは異質なもので、金は本来、投資とか運用から遠い資産です。お金としては歪んだ存在と云うことが出来るかも知れませんが、だからこそ金は信用とも信用リスクとも無縁の資産となります。(※)

そんなお金としては歪んだ金が、21世紀に入って輝きが増しているのは、つまり、社会や経済が混濁して先々が見通せなくなっているからに他なりません。

最後にひとつ。金はたしかに信用とも信用リスクとも無縁の資産です。ただ、金には金利がつかないゆえに、金利の上昇や株価の上昇局面は、金価格にとって大敵となります。金と付き合う場合は、ここのところをしっかりと認識しておくことが大切です。

次回から、金価格のABCをとびとびで4回に渡って掲載します。


イラスト:三井孝弘さん


(※)
もしも配当を産む金があるとしたら、そこには何がしかのリスクがあると考えてしかるべきでしょう。



by naomemo | 2015-02-26 08:53 | →はじめての金読本


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はじめての金読本、移植第5弾です。2010年2月10日に公開した原稿を整理、加筆したものです。

金の真価を考える上で、よい材料が数年前に身近にありました。

戦後の日本を象徴する会社の一つである日本航空が、長期にわたる経営不振から脱け出せず、政府の支援をうけて出直すことになりました。理由や事情はさておき、その結果、日本航空の株価は一旦ゼロになることが決まりました。今から30年前、誰がこの姿を予想したでしょうか。

株価というのは会社の経営状況を反映します。好調が続けば、あるいは成長すると予想されれば、株を買う人が多くなって、おおむね株価は上がります。株主は配当を手にすることもできます。

もちろん実際はそれほど単純なものでもなく、現在の米国や日本のように、中央銀行による果敢な量的緩和によって株価が押し上げられている面もありますから、一概には云えません。

その反対に不調が続けば株価は下がります。経営が立ち行かくなれば、株価はゼロになります。先の日本航空はその最悪のケースに当たります。(※)

でも、これは、株に限ったことではありません。極端なことを云えば国債にも当てはまることです。発行元が、株は会社、国債は国という違いはあっても、つまるところ信用がベースという点では同じです。信用が高ければ価値ある優良な資産となりますが、信用を無くせば無価値になりうるというのが、株や国債といったペーパー資産の宿命です。

それと好対照なのが金地金や金貨です。金は世界各地で産出される貴重な天然資源です。会社とか、国とか、つまり誰かの信用に依って価値が成り立っているものではなく、独自の価値をもつ実物の資産です。

自立した資産ですから、金は「信用」とも「信用リスク」とも無縁です。何があっても無価値になることがありません。

そして同時に「自立した資産」であるがゆえに、金は金利という果実を生むこともありません。株のように配当が付くということもありません。ただ、そこに存在するだけのものです。

そうした意味から、金は、攻めの資産ではなく、守りの資産と云うことができます。あくまで「万一の保険」であり「ヘッジ資産」です。世界中が戦争に向かいつつあるかに見える今だからこそ、注目しておきたい金の側面と云えるでしょう。


イラスト:三井孝弘さん


(※)
2010年にいったん倒産した日本航空ですが、そののち稲盛和男という名経営者を得て再建を成し遂げたことは、社会にとっても従業員にとっても、僥倖と云うほかありません。



by naomemo | 2015-02-20 09:04 | →はじめての金読本

金は国籍を持たない通貨


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はじめての金読本、移植第4弾です。2010年2月1日に公開した原稿を整理、加筆したものです。

海外に出かけると日本とのさまざまな「違い」に気づかされます。町並みが違います。食べ物が違います。人の肌の色や顔つきが違います。もちろん歴史も文化も習慣も違います。それらの違いが言葉の違いとなっても現れています。

とうぜん、その地で使われているお金は日本円ではありません。その地が米国なら「ドル」が使われています。EU圏なら「ユーロ」が使われ、お隣の韓国なら「ウォン」が使われ、中国なら「人民元」が使われています。なにを今さらと思われるかも知れませんが、もう少し我慢してお付き合いください。

お金が違うということは、たんに名称や単位が違うというだけのことではないのですね。お金は、その国の歴史、経済、社会、文化というぶあつい土台に根ざしているもので、言葉とおなじく国籍や地域籍を持っているわけです。

ここで少し寄り道をします。

EU圏の単一通貨「ユーロ」は誕生してまだ16年です。いま荒波に揉まれて試練の時を迎えていますが、ほんとうの意味で域内に根付いていくには、それ相当の時間が必要ということなのでしょう。

ユーロ硬貨のデザインそのものが暗示的でもあります。表面のデザインは共通でヨーロッパの俯瞰図が描かれていますが、裏面は各国独自のデザインになっているからです。まさに「通貨はひとつ、財政も国の事情もバラバラ」というユーロのアキレス腱が、硬貨のデザインに現れていると云えそうです。

さて、ここに、世界にひとつだけ国籍を持たないお金(通貨)が存在します。どこの国あるいは地域が発行しているわけでもないのに、通貨としての価値が認められているもの。それが金です。

たしかに金貨にも金地金にも、製造元の商標などが刻印表示はされてはいますが、有り体に言えば、それは血統書みたいなもの。評価の尺度は、金の場合、品位(金の純度)であり重量であって、それはまさに世界共通のものです。

繰り返しますが金には国籍も地域籍もありません。どこのパスポートも必要としない無国籍通貨です。だからこそ民族のカベを越え、宗教のカベを越え、国家や政治や経済のカベも越えて、世界の誰からも受け入れられているのです。

世界中にリスクが満ち溢れている現在、この点は、もっとも注目すべき金の真価と云って良いかも知れません。


イラスト:三井孝弘さん

by naomemo | 2015-02-18 07:40 | →はじめての金読本


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はじめての金読本、移植第3弾です。2010年1月21日に公開した原稿を整理、加筆したものです。

人類が金と出会ってから、少なくともすでに7000年もの時間が経過しています。この点はすでにお話した通りですが、それだけ膨大な時間をかけて、これまで人類が営々と採掘し、精製し、加工してきた金製品は、この地上にいったいどれくらいあるのでしょうか。

もったいぶるつもりはありません。地上に存在する金製品をすべて集めて純金に精製し直すと、2010年末で約166000トンとされます(※1)。現在、年に2500〜3000トンほど新規に掘り出されていますから、それから4年経過した2014年末では、およそ178000トンほどになるだろうと推計されます。

178000トンと云われても、その数字だけでは実感が湧かないだろうと思います。それがいったいどれくらいの量になるのか、使い古された喩えになりますが、イメージしやすいようにオリンピック競泳用の50mプールに全量を熔解して流し込んだとすると、およそ3.7杯分になります(※2)。そのうち世界の中央銀行が保有している金は30000トンほどです。

全世界の金を集めても、それだけの量ですよと云っても、驚いて信じない人が多いのですが、これは事実です。金の地上在庫はじつに僅かなものという他ありません。

金が持つ不滅の輝きその長い通貨としての歴史と同様に、この希少性も、金がもつ真価のひとつとなっています。


イラスト:三井孝弘さん


(※1)
金の地上在庫166000トンというデータは、世界的に信頼の高い英国の貴金属調査会社GFMS社(現在Thomson Reuters社の貴金属調査部門となっています)が毎年発行している、“Gold Survey"(金需給報告書)2011年版に記載されています。



(※2)
オリンピック競泳用の50mプールを、仮に縦50m×横25m×深さ2mの容量として計算しています。数学が得意の人はご自分で計算してみてください。ちなみに金の比重は19.3です。1リットルのペットボトル1本に入った金と釣り合う水は、おなじ容量のペットボトル19.3本分というわけです。



(追記)
上の注釈(※2)で言及したオリンピックプールの深さについて、読者から問い合わせが入ったので、少し説明します。オリンピック委員会による推奨深度は3メートルとなっています。しかし実際的には2メートル以上あれば規格をクリアするようです。したがって、ここでは希少性をいたずらに煽ることを避けるためもあって、最低深度2メートルを採用しています。

by naomemo | 2015-02-12 05:00 | →はじめての金読本


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はじめての金読本、移植第2弾です。2010年1月18日に公開した原稿を整理、加筆したものです。

私たちは、買い物などでクレジット・カードを使うのが当たり前になっています。パスモやスイカといったICカードにマネーを入れて、財布代わりに持ち歩くことにも抵抗がなくなっています。現在、少なくとも先進諸国では、お金はすでに紙幣やコインから電子マネーへ向かっていると云って間違いではないでしょう。世の変転はじつにめまぐるしいものです。

電子マネーからさらに進化したお金の形態として仮想通貨ビットコインも登場し注目されています。いつか題材として取り上げたいと思っていますが、それはさておきここで理解しておきたいことは、マネーの電子データ化がいちだんと進む21世紀になって、まるきり正反対の原始マネーともいうべき「金現物」が世界中で求められるようになっていることです。これはとても面白い現象と云うほかありません。

ここで少し寄り道をします。

通貨史をひもとくと、人類が最初にお金として用いたものは、牛であり子安貝(宝貝)であったことが分かります。じつに興味深いことです。そのあと麦、米、布帛の時代があり、ようやく金銀が登場します。こうして並べてみると、これらはまるで異質なものの連なりのように見えますが、たぶんそうではありません。「希少なもの」であると同時に「豊穣を約束するもの」であるという点で通底していたのだろうと思われます。

本筋に戻ります。前回紹介したように、金はまず装飾品として用いられていました。それがいつの頃からか「お金」としても用いられるようになりました。富の交換手段として、また保存手段として、ですね。最初がどのような形態のものであったか定かではありませんが、史上はじめて公式の金貨が登場するのは紀元前7世紀〜6世紀のことです。現在のトルコ西部に存在したリディア王国で作られた金貨(※1)が最初です。

つまり通貨としての金の歴史は、少なくとも2500年〜2600年前までさかのぼることができるというわけです。この時代から金は、それまでの装飾品としての顔の他に、もうひとつ通貨としての顔を持つことになったわけです。以来、金は、21世紀の現在にいたるまで、お金=通貨であり続けています(※2)。このことは別の機会にあらためて取り上げますが、ここでまずしっかり押さえておいてください。

ちなみに、第二次大戦後に世界の基軸通貨となった米国ドルが誕生したのは、諸説ありますが18世紀後半の1785年で、その歴史は230年。日本円の誕生は19世紀後半の1871年ですから歴史は145年。そしていま嵐の真っただ中にある欧州統一通貨ユーロの誕生にいたっては1999年、まだ20年にも満たない新しい通貨です。金には他の通貨とは比較にならない歴史の重みがあるということを知っておきましょう。

歴史がすべてではありませんが、それでも歴史は重要です。


イラスト:三井孝弘さん


(※1)
リディア王国で作られた金貨の正式名称は、エレクトロン貨。金銀の自然合金で琥珀色に見えることから、琥珀金貨とも呼ばれる。ライオンの顔を打刻した本稿のイラストは、貨幣博物館所蔵のエレクトロン貨を模写したもの。
http://www.imes.boj.or.jp/cm/collection/tenjizuroku/book/pageindices/index13.html



(※2)
各国中央銀行では外貨準備資産というものを保有しています。これは急激な為替変動などに備えて保有する外貨資金であり、通貨危機などのリスクによって他国に対して外貨建て債務の返済などが困難になった場合に用いる資金です。具体的には、外貨資産、SDR(IMFの特別引き出し権)、金などを指します。金は、21世紀の現在においても世界共通通貨としての位置づけにあります。



by naomemo | 2015-02-06 12:58 | →はじめての金読本


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「はじめての金読本」の移植は、まず、金の価値って何だろう?というところから始めます。お題は「金は太陽のごとく輝くもの」。2010年1月14日に公開した原稿を整理し直し加筆したものです。

古代人の感覚がどのようなものであったか、もちろん定かではありません。現代に生きる我々に知り得ようはずもありません。けれど古代文明の遺跡から発掘された金の装飾品の数々から、人類の金に対する愛着がどれほど深いものであったか、おぼろげながら感じ取ることはできます。

考古学の発掘調査によれば、これまでに発掘された人類最古の金装飾品は、紀元前五千年紀後半のものといいます(※1)。つまり人類と金との付き合いはすでに七千年近くに及ぶということです。

金の比重は19.32あります。つまり水の19倍強に相当するということです。実際に手に取ってみると日常感覚を覆すようなズシリとした重みを感じるはずです。この重量感はなにものにも代え難いものがあります。

金は自然環境下では錆びることも腐ることもありません(※2)。百年の時を経ても、千年の時を経ても、輝きを失うこともありません。ここから不滅のイメージが導き出されます。

そもそも金の元素記号である ”AU” は、ラテン語の “AURUM(輝ける曙)” から派生したものだとされます。その名称からして、すでに闇を払う太陽を意味しているわけです。

金についての人類の思いがどういったものであったか、こうした事象が如実に示していると云ってよいでしょう。金は、古代人にとって、太陽のごとく不滅の輝きを放つ貴い物質であったわけです。

「資産としての価値」とか「通貨としての価値」について考える際、まずはこうした人類の心の奥に潜んでいるであろうプリミティブな感動や願いを感じ取っておくことが第一歩ではないかと思います。

そうでなければ、現代の女性たちが、ゴールドジュエリーを求める気持ちも、世界中の中央銀行が金を保有し続けている理由も、とうてい理解することは出来ないでしょう。金には、理屈を超えた不思議な魅力がある、と、ひとまず理解しておくと良いかも知れません。


イラスト:三井孝弘さん

(※1)
黒海沿岸、現在のブルガリア共和国辺りで栄えた古代トラキア文明の「ヴァルナ集団墓地遺跡」から、紀元前5000年紀のものと推定される
「金の王笏(おうしゃく)」
や「金のバングル」が出土しています。



(※2)
自然環境の中で金は腐蝕しませんが「王水」など人工的に生成された混合物には反応するものがあります。



by naomemo | 2015-02-04 14:09 | →はじめての金読本