金は無価値にならない実物資産


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はじめての金読本、移植第5弾です。2010年2月10日に公開した原稿を整理、加筆したものです。

金の真価を考える上で、よい材料が数年前に身近にありました。

戦後の日本を象徴する会社の一つである日本航空が、長期にわたる経営不振から脱け出せず、政府の支援をうけて出直すことになりました。理由や事情はさておき、その結果、日本航空の株価は一旦ゼロになることが決まりました。今から30年前、誰がこの姿を予想したでしょうか。

株価というのは会社の経営状況を反映します。好調が続けば、あるいは成長すると予想されれば、株を買う人が多くなって、おおむね株価は上がります。株主は配当を手にすることもできます。

もちろん実際はそれほど単純なものでもなく、現在の米国や日本のように、中央銀行による果敢な量的緩和によって株価が押し上げられている面もありますから、一概には云えません。

その反対に不調が続けば株価は下がります。経営が立ち行かくなれば、株価はゼロになります。先の日本航空はその最悪のケースに当たります。(※)

でも、これは、株に限ったことではありません。極端なことを云えば国債にも当てはまることです。発行元が、株は会社、国債は国という違いはあっても、つまるところ信用がベースという点では同じです。信用が高ければ価値ある優良な資産となりますが、信用を無くせば無価値になりうるというのが、株や国債といったペーパー資産の宿命です。

それと好対照なのが金地金や金貨です。金は世界各地で産出される貴重な天然資源です。会社とか、国とか、つまり誰かの信用に依って価値が成り立っているものではなく、独自の価値をもつ実物の資産です。

自立した資産ですから、金は「信用」とも「信用リスク」とも無縁です。何があっても無価値になることがありません。

そして同時に「自立した資産」であるがゆえに、金は金利という果実を生むこともありません。株のように配当が付くということもありません。ただ、そこに存在するだけのものです。

そうした意味から、金は、攻めの資産ではなく、守りの資産と云うことができます。あくまで「万一の保険」であり「ヘッジ資産」です。世界中が戦争に向かいつつあるかに見える今だからこそ、注目しておきたい金の側面と云えるでしょう。


イラスト:三井孝弘さん


(※)
2010年にいったん倒産した日本航空ですが、そののち稲盛和男という名経営者を得て再建を成し遂げたことは、社会にとっても従業員にとっても、僥倖と云うほかありません。



by naomemo | 2015-02-20 09:04 | →はじめての金読本