金は国籍を持たない通貨


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はじめての金読本、移植第4弾です。2010年2月1日に公開した原稿を整理、加筆したものです。

海外に出かけると日本とのさまざまな「違い」に気づかされます。町並みが違います。食べ物が違います。人の肌の色や顔つきが違います。もちろん歴史も文化も習慣も違います。それらの違いが言葉の違いとなっても現れています。

とうぜん、その地で使われているお金は日本円ではありません。その地が米国なら「ドル」が使われています。EU圏なら「ユーロ」が使われ、お隣の韓国なら「ウォン」が使われ、中国なら「人民元」が使われています。なにを今さらと思われるかも知れませんが、もう少し我慢してお付き合いください。

お金が違うということは、たんに名称や単位が違うというだけのことではないのですね。お金は、その国の歴史、経済、社会、文化というぶあつい土台に根ざしているもので、言葉とおなじく国籍や地域籍を持っているわけです。

ここで少し寄り道をします。

EU圏の単一通貨「ユーロ」は誕生してまだ16年です。いま荒波に揉まれて試練の時を迎えていますが、ほんとうの意味で域内に根付いていくには、それ相当の時間が必要ということなのでしょう。

ユーロ硬貨のデザインそのものが暗示的でもあります。表面のデザインは共通でヨーロッパの俯瞰図が描かれていますが、裏面は各国独自のデザインになっているからです。まさに「通貨はひとつ、財政も国の事情もバラバラ」というユーロのアキレス腱が、硬貨のデザインに現れていると云えそうです。

さて、ここに、世界にひとつだけ国籍を持たないお金(通貨)が存在します。どこの国あるいは地域が発行しているわけでもないのに、通貨としての価値が認められているもの。それが金です。

たしかに金貨にも金地金にも、製造元の商標などが刻印表示はされてはいますが、有り体に言えば、それは血統書みたいなもの。評価の尺度は、金の場合、品位(金の純度)であり重量であって、それはまさに世界共通のものです。

繰り返しますが金には国籍も地域籍もありません。どこのパスポートも必要としない無国籍通貨です。だからこそ民族のカベを越え、宗教のカベを越え、国家や政治や経済のカベも越えて、世界の誰からも受け入れられているのです。

世界中にリスクが満ち溢れている現在、この点は、もっとも注目すべき金の真価と云って良いかも知れません。


イラスト:三井孝弘さん

by naomemo | 2015-02-18 07:40 | →はじめての金読本