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ケン・ローチの言葉


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「英国の至宝」と呼ばれる映画作家がいる。欧州映画のファンなら知らないものはいないであろうケネス・ローチ、通称ケン・ローチである。1936年、イングランド中部のウォリックシャー州ヌニートンで誕生。現在78歳である。

英国の労働者階級や移民を描いた作品に傑作が多いが、日本で人気が高まったのは2006年公開の「麦の穂をゆらす風」がキッカケだったろうと思う。同作品は第59回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドール(Palme d’Or=黄金の棕櫚)を受賞している。

その彼が2005年の”Sweet Sixteen”以来、数々の作品でコンビを組んでいる脚本家がポール・ラヴァティ。この盟友ともいうべき二人の共同作品に、民間軍事会社によって雇われた民間兵を題材に、世界を覆いつつある軍事ビジネスの実体を描いた「ルート・アイリッシュ」がある。日本でも2012年に公開されたので観た人は多いと思うが、その映画の冒頭にこんなテロップが流れる。

「真のイラク戦争終結は、すべての戦争請負業者たちが、あの地から去ってはじめてなされると我々は信じている ー ケン・ローチ」

私はこの映画をキッカケに、戦争はもはや〈国の軍隊〉と〈国の軍隊〉の間だけで行われている訳でもないことを知った。以下がウィキペディアによる民間軍事会社についての説明文の一節。

「1980年代末期から1990年代にかけて誕生し、2000年代の「対テロ戦争」で急成長した。国家を顧客とし、人員を派遣、正規軍の業務を代行したり、支援したりする企業であることから、新手の軍需産業と定義されつつある。」

つまり、民間軍事会社とは、東西冷戦が終了する頃に生まれ、民営化ブームの進展とともに成長したビジネスということなのだろう。そういえば、ケン・ローチも、ポール・ラヴァティも、1990年代から進む「規制緩和」「民営化」「自由化」の負の側面にスポットを当てて来たようにも思う。

その意味で、彼らは、すでに十年前から、いま世界中で熱気を帯びつつある愛国主義の勃興を予見していた映画作家と云えるかも知れない。

最後になったけれど、彼らの最新作が日本公開中である。その「ジミー、野を駆ける伝説」は「麦の穂をゆらす風」の続編とも云われているが、さて、どんな作品なのだろう。私もちかぢか観たいと思っている。予告編がYouTubeに上がっているのでリンクを張っておきます。

画像出典:「天使の分け前」公式サイト



by naomemo | 2015-02-13 11:27 | シネマパラダイス