お金としての歴史は2500年


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はじめての金読本、移植第2弾です。2010年1月18日に公開した原稿を整理、加筆したものです。

私たちは、買い物などでクレジット・カードを使うのが当たり前になっています。パスモやスイカといったICカードにマネーを入れて、財布代わりに持ち歩くことにも抵抗がなくなっています。現在、少なくとも先進諸国では、お金はすでに紙幣やコインから電子マネーへ向かっていると云って間違いではないでしょう。世の変転はじつにめまぐるしいものです。

電子マネーからさらに進化したお金の形態として仮想通貨ビットコインも登場し注目されています。いつか題材として取り上げたいと思っていますが、それはさておきここで理解しておきたいことは、マネーの電子データ化がいちだんと進む21世紀になって、まるきり正反対の原始マネーともいうべき「金現物」が世界中で求められるようになっていることです。これはとても面白い現象と云うほかありません。

ここで少し寄り道をします。

通貨史をひもとくと、人類が最初にお金として用いたものは、牛であり子安貝(宝貝)であったことが分かります。じつに興味深いことです。そのあと麦、米、布帛の時代があり、ようやく金銀が登場します。こうして並べてみると、これらはまるで異質なものの連なりのように見えますが、たぶんそうではありません。「希少なもの」であると同時に「豊穣を約束するもの」であるという点で通底していたのだろうと思われます。

本筋に戻ります。前回紹介したように、金はまず装飾品として用いられていました。それがいつの頃からか「お金」としても用いられるようになりました。富の交換手段として、また保存手段として、ですね。最初がどのような形態のものであったか定かではありませんが、史上はじめて公式の金貨が登場するのは紀元前7世紀〜6世紀のことです。現在のトルコ西部に存在したリディア王国で作られた金貨(※1)が最初です。

つまり通貨としての金の歴史は、少なくとも2500年〜2600年前までさかのぼることができるというわけです。この時代から金は、それまでの装飾品としての顔の他に、もうひとつ通貨としての顔を持つことになったわけです。以来、金は、21世紀の現在にいたるまで、お金=通貨であり続けています(※2)。このことは別の機会にあらためて取り上げますが、ここでまずしっかり押さえておいてください。

ちなみに、第二次大戦後に世界の基軸通貨となった米国ドルが誕生したのは、諸説ありますが18世紀後半の1785年で、その歴史は230年。日本円の誕生は19世紀後半の1871年ですから歴史は145年。そしていま嵐の真っただ中にある欧州統一通貨ユーロの誕生にいたっては1999年、まだ20年にも満たない新しい通貨です。金には他の通貨とは比較にならない歴史の重みがあるということを知っておきましょう。

歴史がすべてではありませんが、それでも歴史は重要です。


イラスト:三井孝弘さん


(※1)
リディア王国で作られた金貨の正式名称は、エレクトロン貨。金銀の自然合金で琥珀色に見えることから、琥珀金貨とも呼ばれる。ライオンの顔を打刻した本稿のイラストは、貨幣博物館所蔵のエレクトロン貨を模写したもの。
http://www.imes.boj.or.jp/cm/collection/tenjizuroku/book/pageindices/index13.html



(※2)
各国中央銀行では外貨準備資産というものを保有しています。これは急激な為替変動などに備えて保有する外貨資金であり、通貨危機などのリスクによって他国に対して外貨建て債務の返済などが困難になった場合に用いる資金です。具体的には、外貨資産、SDR(IMFの特別引き出し権)、金などを指します。金は、21世紀の現在においても世界共通通貨としての位置づけにあります。



by naomemo | 2015-02-06 12:58 | →はじめての金読本