嘘の破綻 ー「彼女が消えた浜辺」

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人間は嘘をつく生きものである。いや、動物だって、植物だって、擬態という立派な嘘をつくから、生きとし生きるもの、すべて嘘をつく、と言っても良さそうだ。何のために嘘をつくのか?もちろん、生きるために。

生きる目的以外に嘘をつくのは、おそらく人間だけではないだろうか。人間は悪意に満ちた嘘もつけば我が身を守るための嘘もつく。あるいは相手を籠絡するための嘘もつけば人間関係を壊さないための嘘もつく。

人間がつく嘘は、じつにバラエティ豊かである。嘘の役割は果てしなく広いのだ。そして、嘘が嘘のままにきちんと機能しているうちは、おそらく平和が保たれることになるのだろう。逆にいえば、ひとたび嘘が破綻すると、たちどころに大きな波紋がひろがることになる。

イラン映画「彼女が消えた浜辺」は、そうした「嘘の破綻」をテーマにした作品だった。

ほんとうなら幸福な結果を約束してくれるはずだったセピデー(ゴルシフテ・ファラハニ)の小さな嘘が、友人家族たちとヴァカンスにやってきた避暑地の浜辺で、唐突に破綻してしまう。その途端、友人たちは自己保身に走る。私もそうじゃないかと思ってたのよ、と。

セピデーの友人エリが浜辺で消えたことを巡って、セピデーは次第に自分を追い詰めて行くことになる。夫からも友人たちからも追い詰められて行くことになる。詳しいことは書けないけれど、とてもとても切ない物語なのだった。切ない気分でいっぱいになって、渋谷ルシネマを後にした。

それにしてもこの作品に登場する女たちの、なんと魅力的なことか。じつに美しい。それだけでも一見の価値あり。

ちなみに監督アスガー・ファルハディは本作でベルリン映画祭銀熊賞を受賞。来月公開される次回作の「別離」では、ベルリン映画祭金熊賞、今年の米アカデミー賞外国語映画賞を受賞している。注目の監督だね。




by naomemo | 2012-03-23 17:56 | シネマパラダイス