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短編アニメ「つみきのいえ」を観た

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「つみきのいえ」という短編アニメーション作品が気になっていた。ようやく昨日ゆっくり観ることができた。

わずかづつ海面が上昇して、ゆっくり水没していく街がある。そのうちの一軒に住む一人暮らし老人がこの物語の主人公。彼は、海面がフロアに浸水するまで上昇するたび、今の住まいの上にレンガを積み上げて新たな住まいを作って暮らしている。面白いなあ思いながら観ていると、住まいの引っ越しで家財道具を運び出している最中に、うっかり床下へパイプを落としてしまう。

おそらく大切なパイプなのだが、仕方ないねと諦めかける。そこへ小舟の物売りが折よくやって来る。物売りから新しいパイプを買おうと物色しているうちに、ふと潜水服に目が止まる。老人は心変わりしてパイプではなく潜水服を買う。そしてそれを着込んで床の扉を開けて海の中の階下へ潜っていってパイプを拾う。

良かった良かったと思って観ているうちに、老人にはその住まいでの生活が思い出されて陶然となる。老人は、やがて、その床下へ、さらにまた床下へとダイブしていく。床下へダイブするたび、当時の生活が去来して陶然となる。そして、いつしか、最初の住まいが緑ゆたかな平原にあった頃、いまは亡き妻との出会いのシーンが映し出される。

どうやら床下へのダイブとは記憶の底へのダイブそのものなのだった。あるいはたんなる夢なのかも知れないのだけれど、やがて、一人暮らしの老人には、記憶の底にこそ、ゆたかな生活があるのかも知れないなあと思い当たり、じんわり染みてくるのだった。

加藤久仁生(監督)と平田研也(脚本)のコンビが生み出した、なかなか素敵なアニメーションだった。



by naomemo | 2011-07-19 08:24 | シネマパラダイス