鬼平、京都へ行く

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今回も鬼平犯科帳メモ。鬼平は、この三冊目で、火付け盗賊改方をいちど解任される。その機会を利用して父親の墓参りに京都に向かう。若い頃、京都奉行職に任じられた父に従って鬼平も2年ほど京都にいて、ずいぶんと遊んだらしい。その地で父が亡くなり、埋葬されているということなのだ。

京都に向かう道中でも鬼平は盗賊との関わりをもつ。盗賊の弟子にもなっている。もちろん京都の地でも盗賊と関わりをもつ。鬼平に平穏は訪れない。それほどに犯罪が多いということでもある。京都から奈良に向かう道中では、十数人の腕の立つ浪人に命を狙われて囲まれる場面もある。あやうし、鬼平。

この三冊目に入っている物語は
麻布ねずみ坂
盗法秘伝
艶婦の毒
兇剣
駿州・宇津谷峠
むかしの男

特有の表現が目につくようになってきた。

たとえば、『麻布ねずみ坂』には、こんな表現がある。
「駕篭わきに侍が一人、小者二人がつきそって来たところを見ると、身分のある武家へ治療におもむいたにちがいない。」

『兇剣』にも、こんな表現もある。
「『おう、猫鳥の伝五郎さんではねえか?』と、低く声をかけた。昨日、若い女を追いかけていたあの男の名は、伝五郎というらしい。」

「ちがいない」とか「いうらしい」とか、これ、なんだろうね。作者、池波正太郎は、自分自身のアタマのなかで映像として展開する物語を観ながら、それを言葉に置き換えていくという作業を行っているのかな。言葉で場面を作っていくという書き方じゃなく、まず最初にシーンのイメージがあって、それを肉付けしていくという順序で書いているような気がする。幼い頃から絵を描くことが好きだったという作者の体質から来るものかもしれないね。見たことがないので確証はないけれど、池波正太郎の生原稿は比較的きれいなんじゃないだろうか。

それにしても、『鬼平』を読んでると、男としての立ち居振る舞いが気になって来るんだよねえ。おい、きちんとしろよ、お前、ってねえ。困るよ。

by naomemo | 2011-02-01 06:44