ヘールシャムってなんだろう?

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ようやくカズオ・イシグロの「わたしを離さないで(Never Let Me Go)」を読み終えた。公園のベンチで、主人公キャシーによって語られる話にじっくり耳を傾けていたような気分だった。たかだか一冊の小説を読むのに、これほどの時間がかかるとは。

くわしいことは書きにくい内容なので、ごく簡単に。舞台はヘールシャム。英国の寄宿舎を彷彿させるような施設。中心的な登場人物は、キャシー、ルース、そしてトミーの三人。現在三十一歳になり、介護人の仕事をすでに十一年以上続けているキャシーが、ヘールシャムでの思い出を、ゆっくりゆっくり語り始める。

キャシー、ルース、トミー、この三人だけの関係を聞いていると、いかにもありそうな少年少女の生態のように思える。そして実際その通りなのだけれど、なにかが気にかかる。登場してくる大人といえば、寄宿舎ヘールシャムの先生というか保護官たちだけ。子供たちの親は一切登場しない。ヘールシャムは、外界からまったく遮断された、子供たちのために特別に拵えられた、繭のような空間なのだ。何だろう、これは、と思いながら耳を傾けていく。

今朝走っている時も、「ヘールシャムって何を意味してるんだろう」という疑問が浮かんでは消えた。「クローン」というモチーフは何を暗示しているのだろう。英国の寄宿舎生活の特異性を表現したかったのだろうか。現実から隔離された子供時代の比喩として描いているのだろうか。あるいはキブツのような存在を念頭においているのだろうか。

ちなみに、「わたしを離さないで」は映画化の真っ最中である。トミー役に扮しているのは、「BoyーA」で素晴らしい存在感を示していたアンドリュー・ガーフィールド。この作品、個人的に期待値上昇中である。

by naomemo | 2010-06-21 08:01 | 音楽から落語まで