「カティンの森」に圧倒された

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写真は、数日前に撮った、小雨の中の梅です。あと一週間もすれば、一斉に咲き始めるのかなという感じ。

さて、週末にアンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」を観てきました。昨年末から公開されてたので、ようやく、という感じなんだけどね。とにもかくにも、これほどまでに野太く、虚飾のない作品を撮り切った、ワイダ監督の意志と情熱と体力に、まずは拍手。こんな作品、滅多に出会えるものじゃない。

冒頭に、妻が、夫のアンジェイ大佐を尋ね歩く印象的なシーンがある。ようやく探し当てて、妻は夫に向かってこんなことを言う。

どうして行ってしまうの…、もう私を愛してないのね…、家族と国家とどちらが大切なの…、行かないで…。

軍人の夫は、離れ難い思いを抱きつつも、ロシアの捕虜となって黙って列車に乗り込む。女たちにとって大切なのは、国家ではなく、家族なのだが、男たちは、国家というものの幻想に忠誠を尽くし、そして無意味な死を迎える。いつの世も変わらないものなんだねえ、ほんとに。夫の生存を信じる妻は、いつまでも、いつまでも、夫の帰りを待ち続ける。

帰りの電車のなかでメモしたことを、ふたつ。ひとつは、ソ連のスターリンがカティンの森で実行させたこととは、つまり、ポーランドの「優秀な人間」の皆殺しだったんだな、と。これほどの殺戮を躊躇なく行なわせたスターリンの生い立ちとは、どんなものだったんだろうか。もうひとつ、ヨーロッパで信仰心が薄くなったのは、大陸を戦場にした二つの戦争のせいなのかも知れない、ということ。それを示唆するシーンもある。この作品で描かれていることは、現代にもしっかりつながってるんだよね。

それにしても、残された妻たちの、なんと気丈なことか。

エンディングの銃殺シーンのあと、まるでフィルムが切れたかのように画面がパッと白くなる。ほんの数十秒?ほどの間、レクイエムらしき曲の一節が流れる。そのあと画面が黒く反転し音が消える。静かに、黒バックに白抜きのエンドロールだけが、延々と映し出される。これほど静謐なエンディングは、ちょっと記憶にないね。ちなみに、後で調べたところ、このレクイエムは、ペンデレツキという人の「ポーランド・レクイエム」だと知った。ナクソスから出ているようなので、いっぺん全曲通して聴いてみたいものだ。



おまけです。youtubeにワイダ監督の特集TV番組が上がっていたので、リンクをシェアさせてもらいましす。タイトルは「アンジェイ・ワイダ 祖国ポーランドを撮り続けた男」。


by naomemo | 2010-02-15 08:42 | シネマパラダイス