里山のリスクヘッジ


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米国でトヨタが380万台をリコールする可能性が出て来たとか。運転席のフロアマットがアクセル制御を妨害して、大きな事故につながる可能性があるからという。関連する日経新聞の記事を読んでいたら、「自動車の部品共通化が進んでいるため、ひとたび欠陥が見つかるとリコール台数が膨れあがるリスクが高まっている。」という行があった。これ、何か気になるなあ・・・

以前読んだ、玉村豊男の「里山ビジネス」の第四章「拡大しないで持続する」に、「中山間地のリスクヘッジ」と題する一文がある。印象的だったので、いつか紹介しようと思っていたのだが、今回のトヨタのケースにはぴったりかも知れない。

著者は、数年前、長野県の東御市に「ヴィラデスト・ガーデンファーム・アンド・ワイナリー」を立ち上げた。現在はワイナリーにレストランを併設して運営している。とても辺鄙なところだし、だいたい素人がワイナリー経営など無謀だと言われて反対されたらしい。しかし、現在までのところ、さまざま苦労はあったが、とても順調のようだ。

その彼が、里山周辺で暮らしている人たちから、いろんなことを学んだそうだ。たとえば、こんなことがある。

里山では、ひとつの農家が、おおむね300坪単位で、離れた場所に複数の土地を持っているのがふつうだという。しかも各農家の土地は互いに入り組んでいる。とても不便に見えるし、効率が悪いようにも見える。土地の形状やら、過去の経緯やらなにやらで、簡単に集約できなくても、もう少しまとめたら、効率を上げることはできるんじゃないか。最初はそう思っていたらしい。

ところが、いろいろ話を聞いていくと、どうもそうではないらしい。里山の場合、場所が違うということは、標高が違うということである。山との位置関係で日当りが違うということであり、霜の通る道も違うということでもある。したがって、その年の気候条件によって、収穫に微妙な差が生まれるのだそうだ。去年は上の田んぼが良かったけど、今年は下の田んぼが良かったとか。あるいはひとつの田んぼに病気が出だけど、別の田んぼは大丈夫だった、ということもある。

だから、農水省が口を酸っぱく言っても、ここにあるように、農家は本来、100年、200年の単位で物事を捉えているから、はいそうですか、とはならない。現場や歴史から学ぼうとせず、デスクにすわって計画しているだけの人たちの言うことなど、聞けない話だろう。長い歴史の間には、いろんなことがあるのだから。

これって、つまり、リスクヘッジの考え方ということになるね。

今回のトヨタの事例は、そのまさに対極にある。短期的な効率を優先すれば、トヨタ手法は正しい。しかし、それはあくまでも「いま現在」だけを取った場合のこと。効率を追求した結果、かえって損失は膨大になったりもする。場合によっては、それが死活問題に発展することだってあるだろう。稀にしか起きないリスクに、日頃から備えておくというヘッジの考え方を、そろそろ里山から学ぶ時が来たのかも知れないね。

by naomemo | 2009-10-02 09:00