筋無力症からサンジャックへの道

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友人の友人に、数年前、筋無力症で1年半ほど入院治療を受けていた女性がいる。伝え聞くところによれば、彼女は、2年ほど前からスペイン語の猛勉強を始めたという。そして、この5月中旬に、バッグパックをひとつ背負い、サンティアゴ巡礼800キロの旅に出たのだという。

昨晩、友人から届いたメールによれば、ゴールまで100キロを切ったとか。このペースなら、今週末には目指すサンティアゴに到着するだろう。筋無力症だった人が、一月で800キロを踏破するなんて、にわかには信じ難いが、強い思いは、岩をも貫くことがあるということか。ちょっと感動です。

スペイン語の特訓を始めたのが、2年ほど前というから、ひょっとしたら日本でも公開されたフランス映画「サンジャックへの道」がキッカケになったのかも知れない(サンジャックとは、サンティアゴのフランス語読み)。僕も、ピレネー越えの風景が美しいと聞いて、当時、銀座まで観に出かけたのだった。

記憶はおぼろだが、この際だから、ざっと思い起こしてみる。ある日、兄(やり手のビジネスマン)、妹(性格のキツイしっかり者の教師)、弟(アル中気味の無一文)の三人が、弁護士に呼び出される。母親が亡くなり、遺言状を託されているのだという。

それなりの遺産があるようなのだが、彼らが相続する上で条件が一つあるという。聞いてみれば、フランスのル・ピュイから、スペインの西の果てにある聖地サンティアゴまで、1500キロにおよぶ巡礼路を、三人一緒に歩くことだという。一人でも欠けたら、遺産はどこかへ寄贈されることになるという。

ブツブツ文句を言うものの、けっきょくは長期休暇を取り、ガイド付き総勢十名ほどの巡礼グループに加わって、珍道中が始まる。それぞれが、それぞれの思いを抱えながらの巡礼である。

毎日、毎日の長駆に、足の皮は剥がれるは、足に痛みは出てくるは、疲労で文句やら愚痴やらは出てくるは、兄弟ゲンカは始まるは、自我はむき出しになるは、幻想を見るようになるは、もう散々である。しかし、いつしか、世間のアカが落ち、意固地も取れ始め、仲の悪かった三人が、お互いを思いやるようになってくる。毎日、毎日、数十キロの道のりを歩き続けるうちに、浄化作用が生まれてくるということなのだろう。巡礼の意味は、ひょっとしたら、この「歩くこと」そのものにあるのかも知れない。

ロードムビーといえば米国の専売特許と思っていたが、フランスにもこういう映画があるんだね。思わぬエンディングもあって楽しめる一編となっている。旅行好きなら、きっと歩いてみたくなるだろうね。

by naomemo | 2009-06-16 07:10 | シネマパラダイス