願いは荒野を駆けめぐる

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昨日、四ッ谷荒木町の小料理屋「くろ田」で、旧友たちと落ち合ってご飯を食べた。じつに愉しいひとときだった。ほろ酔い加減になったころ、友人の一人が久しぶりに海外の山を歩きにいく、と言い出した。

もちろん、Going solo、単独行だという。海外の山を一人で歩くなんて聞いていたら、なんだかこちらまで漂白の思いが募ってきた。でも、なかなかそうも行かない。ま、じつは、それで時折、映画館に足を運んだりして、スクリーンの向こう側の「見知らぬ土地へ」旅をしているのだ。

昨年観た内モンゴルを舞台にした映画の話を切り出したら、その彼がぜひ観てみたいという。酔っていたせいか、タイトルが出てこなかったので、ここに紹介しておこうと思う。

タイトルは「トゥヤーの結婚」。内モンゴルの荒野で、寝たきりの夫と小さな子供を抱え、羊の放牧をし、畑を耕し、毎日数十キロ先の井戸へ水を汲みに通うトゥヤー。信じ難いほどの重労働だが愚痴ひとつこぼすこともない。でも、この過酷な環境で家族を養い続けることは、すでに限界に近づきつつあった。

家族を守るために、どうしたらいいのか。トゥヤーは、我々の常識からは想像もつかない、思いもよらぬ方策を考え出す。そして、そのささやかな願いは、荒れ果てた広大な草原を駆けめぐる。いとおしく、せつなく、不思議な温もりのある一本。ランドスケープの圧倒的な力、映像の美しさは、筆舌に尽くし難い。

by naomemo | 2009-05-30 18:54 | シネマパラダイス