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スラムドッグ$ミリオネア礼讃


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主人公ジャマールが、クイズ・ミリオネアに出場、最後の一問まで来たところから物語は始まる。最後の問題は、時間切れで翌日に持ち越し。ところが、その奇跡を面白く思わない人物の密告で、ジャマールは警察に連行され、厳しい尋問を受けることになる。スラム出身の野良犬に、難解なクイズを勝ち抜けるだけの知識があろうはずはない、どこかにインチキがあるに違いないという嫌疑が係っているのだ。

警部ととももに、録画された番組を再生しながら、一問、一問、正解が得られた理由やら背景やらがジャマールの口から語られていく。つまり観客は、一回、一回、過去へ回帰していく時間旅行に立会うようなものだ。語られる過去には、飢えあり、貧困あり、誘拐あり、売春あり、麻薬あり、暴力あり、宗教問題あり。それでもじつに逞しく成長していく子供たちの姿。そのなかでスポットが当たるのは、もちろん主人公のジャマール、そして兄のサリーム、ジャマールが一途に恋心を抱き続けるラティカ。長じたラティカ、じつに魅力的だなあ。

それにしても、映像に映るインドのムンバイは、とてつもないエネルギーの坩堝だ。画面から熱風が吹出している。その坩堝のなかで、ジャマールたちは、つねに何らかの選択を迫られている。そして、そのつど何かを選択してきた挙げ句に、現在はある。それはまるで、クイズ・ミリオネアと同じ構造のように見えてくる。しかし、まあ、こんな感想はどうでもいいか。この映画には、旺盛な生命力とスピード感が横溢している。冒険アドベンチャーと、一途な恋物語と、奇跡的なドリームが混然一体となった作品なのだ。ダニー・ボイルたちは、いつどこで、これほど見事な大衆性を獲得したのだろうか。どきどき、わくわく、あっという間の2時間だった。

以下はメモ。原作はヴィカス・スワラップ。この人、現役の外交官だとか。朝日新聞グローブ「著者の窓辺」に登場している。脚本はサイモン・ボーフォイ、監督はダニーボイル、音楽はA.R.ラーマン。(出演)ジャマール役:デブ・パテル、兄サリーム役:マドゥル・ミッタル、恋人ラティカ役:フリーダ・ピント、警部:イルファン・カーン。ところで、警部役のイルファン・カーンって、「その名にちなんで(The namesake)」にも父親役で出ていたが、じつに味わいのある俳優だな。これからが楽しみの注目株。



by naomemo | 2009-04-20 07:00 | シネマパラダイス