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ホルテンさんに会いにいく

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渋谷文化村ルシネマが毎週火曜日サービスデーになってることを知って、さっそく昨晩、仕事を放り出して行ってきた。目当ては、同時上映の「ダウト」ではなく、「ホルテンさんのはじめての冒険」の方である。なんとなく気になっていたのだ。

ベテラン運転士ホルテンさん、アパートで一人暮らし。お弁当と飲み物を用意し、小鳥のかごに覆いをかけて仕事場に向かうシーンから始まる。電車に乗り込んで、やおらパイプに火を付けて出発。しばらくして暗いトンネルを抜けると、そこは一面の雪景色。まるでホルテンさんが運転するベンガル急行に乗り込んでいたかのように、トンネルから抜けた後に飛び込んできた雪景色がじつに眩い。

なんだか川端康成の小説の出だしのようだなあと思う。そしてトンネルに入ったり抜けたりの繰り返しが、なにやら不思議な世界の始まりを暗示するシーンのように印象的。しっかりと脳裏に刻み込まれた。

ホルテンさんは、晴れがましい席を好むタイプではなく、淡々と40年間、電車の運転士として実直に働いてきた人だ。ところが、67才の誕生日で定年を迎える前夜から、奇妙な出来事に次々と遭遇する。送別会の二次会が開かれているアパートに入れなかったり、いつも愛用しているパイプを紛失したり、靴を失って赤いハイヒールを履く羽目になったり…。そしてある老人との出会いをきっかけに、自分を縛っていたものと初めて本気で向き合うことになる。新しい人生を歩むには、やはり何か大きなきっかけが必要ということなんだろうな。やがて、ホルテンさんが独身を通してきた理由も見えてくる。

それにしても、この「ホルテンさん」という映画は不思議な感覚に充ち満ちている。現実と非現実のトワイライトゾーンのような世界とでもいえば良いだろうか。北欧世界の時間と、極東の日本世界の時間とでは、こんなにも違うものなんだねえ。監督、脚本のベント・ハーメルという人、少し気に入りました。そして北欧の映画を、これからも観て行こうと思う。



by naomemo | 2009-04-08 07:00 | シネマパラダイス